勝手に決めるなそう言ってもそれはある意味ソヨンにとっての理不尽でもある。
学生であるというのも考慮していた筈が、そういう関係性を持ってしまったものを今更片方だけが悪いとも思わないが起きてしまった事実に対処しようとしたソヨンと違ってハリスは、ほんの数日しかこの事実と向き合っていない。
何より話してくれるのかと思っていたパーティでもその件には一切触れられず、業も煮えて今日の訪問に至っていた。
ソヨンの事を考えなかったわけではない。
考えて考えてけれど子供の事をより考えた。
「片親なんて絶対許せない」
「許す許さないじゃなくてそれも仕方ないでしょうと言ってるの」
「君だって親がいなかったんだから片親だけでも大変だと判るだろう」
「解ってるから女史の提案に乗ったのよ」
「だったら俺の提案に乗っても良いだろう!実の親だぞ」
「これから生涯幽閉されますって人が何言ってんのよ!あなたが言ったんでしょ」
そうソヨンは知っていた。
それは睦言の合間に聞かされた非実。
現実味があるとしたらこうなった今だから言えること。
「改革するのは立派だと思うわよ!でも明日明後日にどうこう出来るものじゃないでしょ」
「君が相手ならどうこう出来る問題なんだよ!」
首を傾げたソヨンの前でハリスは口が滑ったという顔をした。
額を抑えるアシムもまた。
きょとんとするソヨンの前で素早く顔を見合わせた二人はゆっくりそっぽを向き。
「まだ隠してることがあるならこの場ではっきりさせてよ」
ソヨンの剣幕にそれまでただ黙って聞いていた院長様が口を開いた。
「それは是非私どもも知りたいことです・・・ソヨンに子供がいたのはまぁこの際、仕方がないでしょう・・・ソ家が後見人であることも驚きですが、お嬢さんが引き受けてくれてる以上そちらは別に相談が必要ですが、まず・・・は貴方達二人の事を片付けた方がよさそうですね」
にっこり微笑む院長様の顔にソヨンもまた緊張が復活していたのだった。