非公式な歓待とはいえ華美なものであったとあれから数日後のソヨンは、戻った学校の休み時間に考えていた。
戻ってきたといっても授業に出る気にはなれず教師と相談の上補習という形をとって今はまた図書館に籠っている。
カンニングをした生徒は、既に学校にはおらず本来ならば留学の話も再考されるべきであるがそうは出来なかったと聞かされがっかりもしたもののこの数日の出来事を思えばそれも些末な事で今後を考えなくてはならない時期に来ていることを実感していた。
「留学するなら・・・」
今のソヨンに伝手が無いわけではない。
それはハリスとの懇談によっても確認されていた。
しかし。
「問題はそこじゃないのよねぇ」
鞄から取り出したカメラとペンダント。
ソヨンの出生を証明するDNA鑑定書。
それらを並べ立て熟考していたソヨンは、午後のそよ風に後押しされるようにいつの間にか眠ってしまっていた。
「・・・・・・・・・」
「・・・いっ、おいっヌナってばー」
小さな手だった。
小さな、暖かい手、その手に頬を撫でられ、耳を摘ままれ、大きな声が聞こえるまではとても良い夢心地だった。
「わー!!!!!」
「えっ、わっ、ちょ、な、何事っ」
ここが図書館であることも忘れ大声で立ち上がったソヨンは、しかし、誰もいないことを確認して胸を撫で下ろそうとして固まった。
「起きたか!?」
「・・・・・・起・・・きた・・・」
「そっか、なら帰るぞ」
小さな背中にソヨンの鞄を斜め掛けして小さな、コ・ミナムがそこに立っていた。
「ちょ、ミナムあんたなんでここに居るのよ」
「ヌナ迎えに来たら友達ってのと先生が入れてくれた」
「へ!?」
あり得ない。
学校にましてこんな小さな子を図書館に誘導までしてくれる大人がいるものかとソヨンは思い首根っこを捕まえてミナムを問い詰めた。
「ヌナが教えてくれたじゃん!あそこの木からなら図書館が丸見えだって!でも大人にみつかっちゃたんだよー」
門の外を指さすミナムを叱りながら思い出したソヨンは舌を出しごめんと謝ると迎えに来た理由を聞き絶句して慌ててミナムの手を握り駆け出していたのだった。
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