過ちは────
────過ちは、取り返しがつかない・・・けれど・・・
けれど死の間際に立って財産を遺産を残せることに気が付いた。
形あるものではない────
役に立つ物でも────
お前の存在は、私にとって不要なものでしかなかった。
この信念をこの人生を後悔したことはなかったが────
レセプションは滞りなく始まり、目まぐるしい時間の中でソヨンとハリスの対面は僅かばかりの間行われていた。
「言いたいことがあるのも聞きたいことがあるのも知ってる!でもそれについてこの場で話す気はないの」
「俺の運命が懸かってもか」
「懸かってもよ」
本来他者の運命など他者の手の中にあるものではない。
それがあると言い張るこの男ハリスとの出会いを思い一度はそれに助けられた自分を後悔などなく誇れるだけのものがあるからソヨンは、懇談を拒否していた。
「私は、一年前貴方からたくさんのものを貰って二度と会わないと言ったのにこういう体たらくってあんまりがっかりさせないでくれる」
呆れ顔のソヨンに不満顔のハリスはどちらが先に折れるのかを根競べしながら楽しみ次の会談へ向かい、その間もこの話は絶えず行われ次々の会談の合間はソヨンとハリスの対立という構図で、傍仕えの人々は後をつきながら困惑をしていた。
「よろしいのですか」
ソヨンの態度に懸念があるのだろう一人が側近であるアシムに声をかけた。
「彼が容認しているのに口を出すべきじゃないよ」
「そうはおっしゃられましても」
「国際問題になるとか思ってる」
「そうなりませんか」
「彼女がこの国の人間ならね」
「そうじゃないのですか!?」
「さぁどうだろうね」
そう本当にどうなのだろうとアシムもまたこの状況を楽しんでいたのだった。