ソヨンの頭は混乱を極めていた。
一度に聞かされた話、他人ごとではあっても重い話と思ってはいたが、そこまで重くまして自分も無関係ではないという事実。
むしろその事実の方が重かった。
「何故と疑問に思って当然だよ」
「えっと逃がされたのは父・・・ですよね」
「そう、渡航記録があっても出国記録は無いからね」
「戻った・・・ってことですよ・・・ね」
「そうなんだろうね」
どうやってと聞こうとしてソヨンは口ごもった。
安全な場所にあってそれでも尚戻りたいと思う人の感情。
それがソヨンの中で理解が追いつけない。
子供を抱えてひとりでも生活をするそれさえも確かに安易に喜ばしいと思って良いものでもなく、手を伸ばしてくれる人がいたとしてそれら経験の上に残る感情は自分の目で体で全てをかけて興した経験は子供一人の今後より重いものだったとしか言いようがなかった。
「それが私が捨てられた理由・・・ですかぁ・・・」
「悲しいかい!?」
「・・・そういうものじゃぁないですね・・・凄い人だったんだなぁ・・・って」
「凄い!?」
「ええ、それが母の為だったのか仕事の為だったのか分かりませんけど・・・少なくともあのカメラに残っていたものって他にもあったんですよね・・・」
「見せては上げられないけどね・・・あったよ」
一年前はこんな話もしなかった。
する必要も無いと思っていた。
どうやってソヨンに辿り着いたかといえば調査の過程でソヨンには辿り着いていた。
幸運だったのはソヨンが語学の勉強をしてそれに長けていてそして何より娘の友人であったことだ。
「前は気軽にお願いできたんだけどね」
「・・・叩いてしまったのは事実なんですよね」
「悪いと思ってるのかい!?」
「!!思ってませんよ!悪いとしたらあいつ!あの人が悪いんです!」
国際問題だと言われても傅かなければならない程の出来事だったと笑うソルジュンにソヨンは申し訳なさそうに謝った。
「アジョシが全て片付けてくれたって聞きました・・・」
「まぁ、それが私の仕事でもあるからね」
「あの後の事は聞かないんですか!?」
「話してくれるのかい!?」
「あの後・・・」
帰国間近にも関わらずソヨンに会いに来た彼の人は、もう二度と会わない人だと思っていたことをソルジュンに告白していたソヨンであった。