「受けてくれて嬉しいよ」
おざなりになってしまう様な挨拶を交わすだけでもその人となりは態度に仕草に嬉しさを伝えてくれ普段何くれと礼儀を重んじられる職にいるだけに久方ぶりの我が家では寛いだ感じもごくごく普通のナムジャを思わせ堅苦しさの一つも見せないのはナ・ソヨンの受け売りもあるが確かに納得もさせられた。
────驚かないでくださいね。
そうい言いながら部屋に通してくれたナ・ソヨンは今はお茶の用意をしてくると辞している。
「学校生活はどうなのかな」
当たり前のことを当たり前に聞かれるそんな経験は、シスター達が毎日の様にしてくれるが、曖昧に答えるに終わるものだ。
しかし聞かれているのがそういうことではないと理解したソヨンは、はっきり答えた。
「この一年、お休みもしましたが単位は足りているので卒業には問題ないと思っています」
呼吸を整え次を紡ぐまで間を開けて。
「父と・・・私の父だという人と同じ道を行くのだとそう思っています」
「そ・・・っかぁ・・・やっぱり彼の娘だねぇ・・・」
「母だと言われた人はあまりに馴染みが無さ過ぎて・・・異国の人って感じだし・・・」
「まぁ、そうだね・・・私もあの写真を見せられても信じてなかったし」
一年前、両親の確かな証拠を持ってソヨンの前に現れたのはこのナ・ソルジュンであった。
確かなDNA鑑定書。
この国においてそれはまだまだ一般的なものではない。
ごくごく一部の人間には価値あるものかもしれないが子供を放棄する親は想像以上に多い現実に対処できるほどのものでもないのだろう。
それがソヨンの率直な感想だったが、シスターが持っていたらしい臍の緒の欠片と何よりそれが入っていたペンダントが決め手になった。
────これはとある一族に伝わる・・・。
まるでおとぎ話だった。
聞かされる話全て作り物。
そう思っても致し方ないほどどこにでもあって夢でもあってどこか遠い国の現実そんな話。
それを持って現れたのがナ・ソルジュンともう一人。
「で、お仕事の話ですけど・・・」
「そうなんだよね学生だからと何度も断ってみたんだけど・・・」
出来なかった訳もそれはソルジュンの仕事の根幹に関わるからだとそう理解できるソヨンもまた依頼者が唯の人では無いことを知っている。
「権力に物言わされました!?」
「物言わぬ権力だからこそ怖いね・・・黙って全てを退けるだけの力を持ってるからね」
「どういう国なのかって今更聞いても良いのですか!?」
「ああ一年前はそんな話もしなかったものね」
長くなりそうなソルジュンの話に耳を傾けたソヨンであった。
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