「本日の予定ですが────」
ブランチの合間に読み上げられるタイムテーブルをデザートスプーンを手慰みに聞いていたこの部屋の主は、壁の隅を一瞥し俯き加減で緊張気味に傅く黒服に目を細め配下を制して午後のスケジュールをそちらに確認し始めた。
「えっ・・・あっ」
突然向けられた水にスーツのポケットを慌てて探り電子手帳を取り出した若者は、焦って上げた頬を引き攣らせ震える肩に置かれた手に更に縮こまった。
「どこの者だ!?」
音もなく近づき手帳を捲りながら見下ろす鋭い視線にけれど何者かと問われなかった分だけ警戒心は解かれ素性を告げた若者は、まだ十代というあどけなさを見せてはにかんだ。
「最長老・・・ね、ったくあの爺様も俺を監視する名目だろうが曾孫には甘いんだ」
高台籠から取り出したオレンジを宙に放り投げた主は、ガブリと一口呟きも噛じり若者に用を言いつけ扉が閉まるのを待って戻ってきた側近に放り投げた。
「彼と貴男では立場が違いすぎますからね」
未だ眼前に寄せられたスプーンを鏡代わりに背を向けたままの主に微笑した側近も噛り付いて平らげた。
「俺だってひとりの人間だろう」
「生まれながらに席を与えられる賓客は選ばれた者だけなのですよ」
「・・・選べないのも・・・・・・な」
「選者が与えられるものだけにしがみつくならば内部はもっと乱れるのです」
「より良い事をしようとするのがヒトの性だろ」
「私欲ばかり追う者は独裁と呼ばれますかね」
「俺だって私欲で動いてるだろっ!?」
「生まれながらに席を与えられる賓客は選ばれた者だけなのですよ」
「・・・選べないのも・・・・・・な」
「選者が与えられるものだけにしがみつくならば内部はもっと乱れるのです」
「より良い事をしようとするのがヒトの性だろ」
「私欲ばかり追う者は独裁と呼ばれますかね」
「俺だって私欲で動いてるだろっ!?」
取り留めもとらえどころもない問答に徐々に募ったイライラが座面を軋らせ舌打ちと共に座り直した主は不満そうにこれ見よがしな溜息をつく側近を見上げた。
「貴男の私欲は未来を見据えてるでしょそ・・・う遠くない未来・・・・・・我々はまた人を傷つける・・・それが歴史とヒトは言うでしょうが、神はそれを学びと言うのです」
「俺達に進歩が無いってことだよなぁ」
「貴男の私欲は未来を見据えてるでしょそ・・・う遠くない未来・・・・・・我々はまた人を傷つける・・・それが歴史とヒトは言うでしょうが、神はそれを学びと言うのです」
「俺達に進歩が無いってことだよなぁ」
食事を再開した主に突き付けられたフォークを拳ごと横どった側近はケロッと突き刺されていた肉も平らげた。
「もがくのが人です・・・小手先でどうにも出来ないから全身全霊で駆けるのです」
「もがくのが人です・・・小手先でどうにも出来ないから全身全霊で駆けるのです」
「限りあるものだか・・・らか・・・」
「だったらお止めになりますか!?一年も懸けた計画に失敗など許されないのですよ」
フォークの先端をじっとり見つめる主の手を握り直した側近が、皿の人参を突き刺した。
「半っ年です・・・貴男に許される時間はそれだけしかありません・・・それでダっメなら大人しく婚姻してください」
グッと握り込まれた手に見開かれた目が顔を背かせた。
「奪っ、てみっせるさ・・・俺の命運がかかってるからな」
「ロマンチストですな・・・抜け出せない運命にこちらから嵌りに行くと・・・は」
「それを覚悟の謀だ・・・アレだけはどうしてでも手に入れる」
「何を以ってそこまで思われているのか私には甚だ解りかねますが、ね、こんな計画に乗った以上全面的なサポートはさっせて頂きますよ」
「だったらお止めになりますか!?一年も懸けた計画に失敗など許されないのですよ」
フォークの先端をじっとり見つめる主の手を握り直した側近が、皿の人参を突き刺した。
「半っ年です・・・貴男に許される時間はそれだけしかありません・・・それでダっメなら大人しく婚姻してください」
グッと握り込まれた手に見開かれた目が顔を背かせた。
「奪っ、てみっせるさ・・・俺の命運がかかってるからな」
「ロマンチストですな・・・抜け出せない運命にこちらから嵌りに行くと・・・は」
「それを覚悟の謀だ・・・アレだけはどうしてでも手に入れる」
「何を以ってそこまで思われているのか私には甚だ解りかねますが、ね、こんな計画に乗った以上全面的なサポートはさっせて頂きますよ」
カチャンと鳴った音に開いた口に放り込まれたフォークに寄せられた瞳が徐々に閉じられ片頬が吊り上がった。
「おっ前がいて良かったよ・・・後の事も全部任せるからな」
苦虫を噛み潰した主の顔を見つめる側近は、軽く頭を下げ非礼を詫びながらも苦笑を漏らし手帳を開いて咳ばらいをした。
「一っ点だけ・・・シャリム殿に何も話していないというのが気になってはいますけどね」
「おっ前がいて良かったよ・・・後の事も全部任せるからな」
苦虫を噛み潰した主の顔を見つめる側近は、軽く頭を下げ非礼を詫びながらも苦笑を漏らし手帳を開いて咳ばらいをした。
「一っ点だけ・・・シャリム殿に何も話していないというのが気になってはいますけどね」
伸びる背筋に上がりきった顎を見上げる主もまた舌打ちをして顔をあげた。
「あいつはなぁ弟達の中でもずば抜けた切れ者だから瞬時に理解するさ!何よりお前の親父もついてる・・・最近の拾いものも数年後には大化けするだろうな」
「そ・・・うですがね、貴男ほどの忍耐力が無いのも事実ですよ」
「俺が消えればいずれか選ばれないものが席を得るぞ」
見合った顔に沈黙が数秒、どちらともなく溜息とも吐息ともつかない息が零れ水を手にした主を背に側近は窓の外を見つめた。
「そうしない為の計画ですかね・・・絵を描けるのは貴男だけ!せめて我らが時・・・三代先くらいまでには、次代も現れると期待もしているのですよ」
「・・・どっちがロマンチストなんだよっ」
「そ・・・うですがね、貴男ほどの忍耐力が無いのも事実ですよ」
「俺が消えればいずれか選ばれないものが席を得るぞ」
見合った顔に沈黙が数秒、どちらともなく溜息とも吐息ともつかない息が零れ水を手にした主を背に側近は窓の外を見つめた。
「そうしない為の計画ですかね・・・絵を描けるのは貴男だけ!せめて我らが時・・・三代先くらいまでには、次代も現れると期待もしているのですよ」
「・・・どっちがロマンチストなんだよっ」
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