遊び相手は多少なりとも事欠かせないが、子供の言動は時として否応なしに真理を突いて涙を浮かべても喚いて立ち向かう者もまた乱暴者だ悪戯っ子だと勝手に銘打たれたあげく今日も近所の子供相手に立ち回り、ぶつけた頭を抱えてとぼとぼ歩くミナムは、どうしたものかと言い訳も面倒くさいと痛みを堪えたぶすくれ顔で重厚な扉を押した。
「たっ・・・」
「ただいまっ!」
ドンっと横からぶつかってきた体に気圧され抱き止めながら驚くミナムは、小さな返答で。
すかさず。
「オッパ!声が小さいっ!」
「なっ・・・」
「あーそれに怪我もしてますねーまーた喧嘩したでしょー」
矢継ぎ早に体のあちこちを触られ、服も捲られ、問いかけも貰えば無言でむすっと睨みつけたところで責任転嫁甚だしくとも相手が怯んだ瞬間に次の手も打てるのだが、如何せん身内でまして同じ顔ともなるとこれには一向に効果が無かった。
無い上に。
「オッパ怖い顔しちゃだめですっ!」
なんて唇に指を突っ込まれたミナムは、思いっきり口角を左右に引っ張られた。
「っいっ!!!!痛っオ・ミニョ!あにするんだほー」
「おおおおオッパほそあにふるんでふぁー」
瞬間の妙技はミニョの顔にも炸裂していた。
頬を引っ張られたミニョは、慌ててミナムの口から抜いた指を眼前に突き付けた。
「オッパが悪い事ばっかりするからお仕置きしただけですっ!」
「コ・ミニョが悪い事するから神様が俺に仕置きさせたんだっ!」
同時に口を開き同時に同じ仕種。
が、ミナムの指先は、ミニョの遥か後方を指し、それがどれだけ効果を持つか解りきった顔でニマニマ笑い、徐々に表情を変えたミニョは、振り返ってその場に跪いた。
「かっ神様っ!ミニョは悪い子ではありませんっ!こっこれは、オッパが」
ミニョの声がカンカンと静かだった礼拝堂一杯に響き、息遣いさえも窓を震わせ心底煩そうに体を引いて片眼を閉じたミナムが耳を塞いだまま顔を近づけた。
「今更神様に謝ったってミニョが悪い子なのは、俺がちゃーんと見てたもんねー」
「オオオオッパが悪い子なのですー!!!お祈りに出ないのもオッパですぅー」
「お前が見てないだけだっての!俺だって毎日ちゃんと祈ってるのっ!」
ミニョの頭に両肘ついて十字を切ったミナムが、目を閉じた。
「今日も守ってくれてありがとうございます・・・ミニョとふたり・・・感謝します」
「・・・オッ・・・パ・・・」
軽く静やかな口調に時折ふたりの間を過ぎるであろう嘆きも織り交ざりミニョが瞳を揺らして立ち上がった。
「へっへ、俺ってやればできる子なんだよっ!コ・ミニョと違ってな!」
「むぅむっミニョだってやれば出来ますっ!!!」
互いに暫く見つめ合い先に口を開いたミナムは、涙こそ零さなかったが顔を拭って笑い、ミニョもまたにっこり微笑んでミナムの両手を引いた。
「夜ご飯キムパ(海苔巻)なのですよっオッパと作ろうって待ってたの!早く行こっ」
「なっ、んっなのシスター達と作れよー男の仕事じゃねぇだろー」
「オッパが一番食べるんだから一緒に作るのですっ!」
ミニョに腕を引かれるミナムは、食堂へ続く廊下の扉を開けたシスターに呼ばれ仲良く駆けだしていたのだった。
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