その日。
夜も明けきらぬ早朝から集まったA.N.Jellは、テギョンを中心に互いの今を確認しつつ、今後について小さな会議を始めていた。
「来週以降のスケジュールといっても俺の仕事に変わりはない・・・但し、コ・ミニョのスケジュールの全てを俺が面倒見る事になったから俺達との共演も増えると思っていてくれ・・・差し迫っては、そこに書かれているCM出演の依頼があった」
コピーされたペラ紙一枚に目を通している。
「わっぉやった、これってミニョとふたりだけってことだね」
ジェルミが喜声をあげる横でシヌとミナムは眉間を寄せた。
「オッれ・・・ソロのタイアップありってなってるけ・・・ど」
「グループで・・・か!?」
「A.N.Jellで受ける仕事だ!これに合わせてアルバム制作と発表をする!今回のリードはシヌに任せるからジェルミにもソロ曲を提供してくれ」
「えっ、ジェルミ歌うの!?」
「えっ!?そうなの!?」
驚喜したミナムがジェルミと顔を見合わせ両手を握り込んでいる。
「ミナムとデュオでも構わないぞ」
「コーラス参加でも!?」
「その辺はお前らに任せる。仕上げて持って来い」
「プロデューサーの仰せのままにぃ」
紙を読み込んでいたテギョンの眉がピクリと揺れ、見逃さないミナムが片頬を上げた。
「ミニョのプロデューサーだろっ」
「方向性決めるのも仕上げるのもヒョンのお仕事って事だよね」
「A.N.Jellと並行して・・・か、ミニョのスケジュールも既に埋まってそうだな」
「ああ半年のつもりが一年先まで真っ黒だ」
「良い事だね」
「ヒョンは、そう思えねぇんだよ・・・ミョーな思惑もあるみてぇだしぃ」
読み終えた紙で遊び始めたミナムに目を見張ったジェルミが抱き着いた。
「ケッ!?」
「俺がいる限り直ぐにはさせなーいっ」
「出来るかっ!まずは俺達の完全復活が先だっ」
唇を突き出したテギョンが舌打ちをした。
「色々ある・・・んだけどバンド活動中心に戻すってことで良いんだろ」
「ああコ・ミナムにはメインボーカルを張れるくらいに努力をしてもらうがな」
「ツインで行くんじゃないの!?」
「俺とミニョで本物のツインとかどう!?」
ミナムの一言と二階から聞こえた音にその場の全員が一斉に動きを止め、ゆっくり階段を見上げている。
「あっれー皆さん早いのれすねぇ・・・」
欠伸をしながら降りてきたミニョが、A.N.Jellを見下ろして大きく開けた口元に手を当てた。
「ヒョンニム目覚まし鳴ってましたよぉ」
「お前の為にかけといたんだよ・・・出掛けるからさっさと飯を食え」
「ふぁい・・・皆さんは!?」
カタンカタンとゆっくり階段を降りきったミニョは、キッチンへ向かい、背中を向けられたのを合図に皆が動き出した。
「食、べるかな」
「俺、軽めで良いや」
「ミーニョー、ハンバーグまだあるー!?」
「ヒョンは何を食べますかー!?」
「コーヒーだけで良い」
リビングのソファに座り込んだテギョンを余所にぷっくり膨れたミニョの手元の鍋を覗いたジェルミと冷蔵庫を開け始めたミナムとお茶を煎れ始めたシヌと久しぶりに五人揃ったリビングダイニングで朝食の時間を過ごしていたのだった。