浮足立つのは、まだ少し、ほんの少しと引いた腰にワンツーステップを踏ませ狭い部屋の中で身を寄せる。
片付けられた一人掛けのソファに居座るぬいぐるみに目配せをして、頬笑を横に滑らせ。
当惑と受け止めきれない乱脈を握り込み。
「どうした!?」
「え、あ、いえ・・・そ・・・」
耳目の丹色が、どこかを擽ってもこの時を止めたくなくて。
けれど、音がステップが終わりを迎える。
「あ、終・・・わりですね」
離れていく身体に離せない掌に正面と決めたそちらを向かせて腰を抱き。
「挨拶までしたら・・・だ」
ぎこちなく曲がる首と膝と奇妙に擡がった腕を直して。
漏れる溜息を見られぬ様に。
「ったく、もう一回だな」
責はこちらだと匂わせたテギョンがリワインドボタンを押しにオーディオに向かった。
「どうしてもそこが上手くいかないんだよな・・・」
腕をホールドにあげてステップを二つ三つ踏んで振り返ると。
「どうした!?」
しゃがみこんだ頭がそっと上げられ、
「・・・ヒョン・・・い、つもですか!?」
不意の質問にテギョンの首が曲がった。
「あ!?何!?」
ごにょごにょ口籠る返答に眉間も寄って、
「言いたいことがあるならはっきり言え」
「やっ、だっからっいつもなのですかっ」
「!?だから何がっだ」
ぷっくり膨れて立ち上がるなりズンズン近づいて来て手を取ったミニョにテギョンが尻込みした。
「なっ・・・」
「ヒョンニム!近いですよね」
「はっ!?えっ」
「この距離です!スタジオでは、拳一つ分開けてって」
「は・・・ぁあ!?」
「お腹がくっついちゃいます」
「はぇあ!?」
ミニョに引かれた腰を咄嗟にテギョンが引き直した。
「むぅうヒョンの方が踊りやすいのですけど・・・」
あれこれ考えステップを踏んでいるミニョを見下ろしていたテギョンが、瞳を一周回して突然噴出した。
「あっはっ、おっ前もしかして・・・」
ククと喉で笑いながらミニョの手を握り直したテギョンは、ゆったりステップを踏み始めた。
「はぇわ、ヒョ・・・」
「ふ、もしかしてやきもちか!?」
「へっ!?」
「俺のリードは踊りやすいねぇ・・・教えて貰ったのは基本のステップだけだろ!」
「そっ」
「相手が誰だか気になるんだろ!?」
「ちっ」
違わないだろと上がった顔にキスを落として笑い続けすっかり浮足立ったテギョンの一日の終わりだった。
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