作業疲れを解消しようと事務所内を散歩がてらにと歩き回っていたテギョンは、吹き抜けから聞こえてきた声に手摺に身を寄せた。
「何やってんだあいつら!?」
ミナム、ジェルミ、ミニョの三人が、何やら手提げの箱を持って駆けて行き、声を掛ける間もなくその姿は見えなくなって、首を傾げたテギョンは、携帯を取り出した。
「今日のレッスンは休みにしたから・・・」
宿舎に居る筈だと考え序でにジェルミも帰って来たのかと確認のメールを打った。
「ったくコ・ミニョめ、俺に隠し事だと・・・食うなと言ってんだから食うなよな」
そのケーキの箱がミナムの部屋に置かれていたのは知っていた。
オッパのですと言われれば、お前も相伴するんだろうとも思ったが、そこまで馬鹿じゃないだろうと高も括った。
しかし。
「シヌに礼を言ってたよな・・・もしかしてこの前見てた・・・」
息抜きにと一周回った回廊をスタジオ迄戻って来たテギョンは、テーブルに置かれた雑誌を捲った。
「やっぱり・・・か女向けの本じゃないか・・・カロリーオフの菓子屋特集!?」
ミニョとミナムの顔が一瞬で輝きそうな記事を目にしてまた首を傾げた。
「こういうのを好きなのは、まぁ解るが・・・あいつ食い意地が張ってるから忠告してんのに・・・」
Fグループの企画室から衣装の確認電話があった。
ミニョが仕事に従事する為の契約書は、既にミナムがサインして数十日前には正式に受理もされている。
はっきりこれをするさせるということは未だ一切伝えていない。
言い包めている訳でもないが、身代わり当時に関与していたことだと言えば曖昧模糊でも納得はするのでそれで良しとして美容院やエステにレッスンにと行かせている。
「まぁ、こんな仕事をオーディションも受けてないド新人にやらせようってんだから大博打だし実際ギャンブラーだよなあの爺も・・・」
そのギャンブルにギョンセも一口噛んでいて。
「絶対爺の提案でもなければアボジの手でもないのがなぁ・・・」
閉じた紙面を撫でて作業机に戻ったテギョンは、ヘッドホンを装着し直した。
「ったく、この音感・・・頭にくるよな・・・なーにがオーケストラだ!」
超絶技巧のアレンジされた曲を聴きながら譜面と睨めっこするテギョンは、手元で光った携帯の返信メールにもう一度返信をしていたのだった。
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