昼少し前に訪ねたビルで面会を求めたシヌは、通された会議室で数十分、小さなテーブルに処狭しと拡げられた写真、書面、レコーダー、映像データの数々を食い入るように目を凝らしては顔色を変える男を前にお茶を啜っていた。
果たして男の頭の中に整合性があるのかないのか。
およそ記者という職業に於いてそれは必要不可欠であろうが、今、目の前にいる男には、それがある様にも思えず、見ている映像が全てを物語っていると思っていた。
「・・・こ、れは・・・」
声を詰まらせた男が白くなった顔をあげるとここへ入ってきた時とは全くもってダラリと下がった肩から何からカン・シヌのインタビューが採れると軒昂（けんこう）していたであろう姿から一変していた。
「貴男の素行調査ってやつらしいですね」
シヌは先日撮影の合間に男から渡された写真を取り出した。
「この女性、ファン・テギョンの恋人ではないかと聞かれましたね・・・」
テーブルに置かれた写真へ男の視線が落ちるその下で息を呑んだ口元を見逃さなかったシヌは、静かに畳みかけた。
「俺たちの不仲説を匂わせて彼女が俺の恋人だとも仰ったでしょう！？正直俺は、彼女が何者でもどうでも良いんですが、少なくとも原因はこれですよ」
カフェの一角でただ談笑しているだけの一枚。
しかしそれは当事者にとってであって第三者から見ればどうとでも捉えうる写真は、恋人同士の仲睦まじい姿に見えないこともない。
真実がどうであっても男と女、ふたりでその場にいるだけで人の想像は数限りなく披露もされ、記者にとっては仕事の種でもあるだろう。
男の出方を待つシヌは、外を眺め始めた。
どんより雲に覆われた空は、今にも泣き出しそうでこの空間を如実に象徴している。
こんなことを告げているのも重い気分でしかなく。
もし仮にスキャンダルへ発展したとしてもテギョンの様に守り抜かなければならない相手でもない為、むしろあちらの方が何かしらの対処をするだろうと予測も出来た。
だから敢えて動こうとは思っていなかったが、対策は思わぬ方向からシヌの手に委ねられ、受け取った資料の悉くとその中の男の思惑は見過ごせない状況でもあって。
「カン・シヌssi・・・」
不意に呼ばれてシヌは男に顔を向けた。
「お話は、わかりました・・・け、ど、これらを貴方が用意したものじゃないとどうして信じられるんです！？」
最もな質問だ。
だが想定内のシヌは、ひときわ豪奢な封筒を持ち出した。
「俺も同じものを受け取ったからです。貴男が訪ねてきた日の写真もあります。これを見る限り調査されていたのは俺だと思えますが、ミナムにもお会いになったでしょ！」
シヌの手から差し向けられた写真と書面に男の目がまた釘付けられた。
「これらを貰ったのは、貴男がその写真を持ってきた翌日です。写真に文書。この意味は、貴男の方がよくご存知ですよね」
指先でテーブルを叩く、その文書の上を。
「俺は、この忠告に従います。どこの誰かは知る必要もないですが、少なくとも貴男がされていることも雇われてしている事の様ですし俺が知りたいのはただ一点。この写真を手に入れられた経緯と貴男にスキャンダルの捏造を頼んだ人物です」
それが誰であるかは、映像データを見た時からある程度の答えが見えていた。
それでもそれを聞きたいと詰め寄ったシヌは、やはりという思いで天井を見上げていたのだった。
ご訪問ありがとう(≧▽≦)
明言していないサブキャラ達の出演につきまして......捜してくださっているのはこちらかと( ´艸｀)謝謝→To You My Dear（1）
”third”は、”円舞曲”の焼き直しでもあるのでこのままいけば”Far away, to you, I want to say（お家に帰ろう）!?”にも繋がるけど”Far ..........”は、デビュー後5年って期限きったからなぁ(;'∀')
今のところ読者様次第って事で願(^^)/最後まで読んで頂いてありがとうございました(^-^)
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