開かれた玄関ドアの先で何気なく向けた目の先で微笑む紳士に釘付けになったテギョンは、出そうとした足を引っ込めていた。
「なっ・・・に!?」
揚々と出迎え者に挨拶する気満々だった笑顔も張り付いた。
「久しぶりだねテギョン時間を作ってくれて嬉しいよ」
「何・・・故い・・・るのです!?」
「さぁ君なら判るんじゃないかな!?」
歩み寄って来たギョンセによって手を握り込まれ肩も叩かれた。
「解・・・りたくないのですけど・・・」
「僕から仕事を奪っていくのだからそれなりじゃ困るんだよ」
揉みしだかれる肩に乗った手を見たテギョンは、楽しそうな声とは裏腹な不敵さに片頬を歪め、引きつった笑顔を戻した。
「・・・クライアントは別だと認識してます・・・が・・・」
「クライアントはね・・・でも君の将来は、僕にも関わることだから・・・彼女は一緒じゃぁないんだね」
背中に回った腕ときょろきょろ後ろを見るギョンセにこっそり溜息を吐いたテギョンは、目を閉じて口角をあげた。
「・・・将来を決めたら連絡くらいしますよ」
「もう決めてるんじゃないのかい!?」
「貴方達を見てたら決めかねると思いませんか!?」
あっさり下がってしまったへの字口を突き出し動かしている。
「思わないよ・・・君は、否定してるからこそ吸収もしてるし、まぁそんな話は置いといて・・・」
ギョンセが小脇に挟んでいた封筒を渡されたテギョンは、中身を引っ張り出して目を見張った。
「こ・・・れ・・・」
「手直しさせてもらった!会長の希望で録音は、フルオーケストラでやることになったから僕が指揮者ね」
「そんっな大掛かりなっ」
一枚、二枚と五線紙を眺めては、目を細め顔を歪めたテギョンは、最後まで確認してギョンセを見据えた。
「大掛かりで良いんだよ・・・それだけ力が入るって事・・・君が背負うものはそういうものだよ」
にっこり笑って踵を返したギョンセを追う様に口を開きかけたテギョンだったが、ドアを閉めやや遠めを歩んでいたユン秘書に遮られた。
「打ちあわせもおありでしょうし客間の用意もありますのでそちらをお使い下さいね」
正面やや左手の廊下を示し反対の廊下へ向かったユンをテギョンが呼び止めた。
「同席されないのですか!?」
「ギョンセssiにおまかせしておけば大丈夫ですから」
笑顔と会釈で去っていくユンを見送るテギョンは、その場でもう一度譜面を取り出した。
「チッ・・・長期契約の弊害とも言えるんじゃ・・・」
赤いペンで明らかな修正が為された箇所を見つめ、呼ばれた方へ足を向けたテギョンは、ピアノの蓋を開けているギョンセの前に座り込んだ。
「なぁテギョンそろそろ教えて欲しいんだけどね、彼女との出会いとか・・・君を変えた人となりとか」
「ヒップスター(ミーハー※)じゃあるまいに流行りに左右される方でもないでしょう」
ポロポロ音を数個鳴らして指先を慣らしたテギョンは、音階を奏で始めた。
「これでもグルーピーだったこともあるよ・・・君に教えてないだけだ」
頬を緩めてソファに座り込み目を閉じたギョンセを横目に悦に入って直された譜面の演奏を始めたテギョンであった。
※の補足
ミーハーとは・・・立派に日本語だよんc(゚()゚*)ノカタカナ英語でもないから気を付けてね(;^ω^)
諸説あるけど日本人お得意の略語から出来た言葉は、昭和初期に企業戦略で広まった。
スターを追いかけてワーキャー叫ぶ女性を昭和時代名前の頭文字に 「み」や「は」が付く人が多かった事から代表格的に用い、元々蔑みの意味も籠っていたらしいが転じて流行を追いかける人という意味で定着してる。
言葉って時代で変わるけどさ(-_-;)・・・プロ野球の「お前」自粛騒動が(;'∀')
「おまえ」も「きさま」も敬語だったと過去形ですのん?(´;ω;`)ウッ…
多用してる身としては結構響いたわ( ´艸`)
だとしてもテギョンには「お前」「お前等」と親しみ有蟻で呼んで欲しいので(^_-)-☆
引き続きお付き合いください。最後まで読んで頂いてありがとうございました(^-^)
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