一帯に砂利の敷かれたアプローチを低速で滑り込んでくる車を見下ろしていた老人が、ドア前に控えていたこちらも老齢の秘書兼執事のユンを振り返り合図を送った。
「今日はお会いにならないですか!?」
確認と質問と戸惑い推量の籠もった声に笑みが向けられデスク上の冊子が撫でられた。
「契約書は既にここにある・・・あれは引き受けたのだ・・・破棄に掛かる労力を由とはしないし、あ奴には出来んさ・・・どんなに突っ張っていようと皇帝だの言われていようと所詮まだまだ・・・身の内に入れたものを守りたいと思う気概は買うが、世間知らずの子供は、教育が大事だ」
下げた頭でひっそり足を引いたユン秘書は、廊下で待ち構えていたらしいユジンに些か目を見張ってお辞儀した。
「ハラボジは何て!?」
「パーティ迄は会われないそうです」
「ふーん呼びつけたから自分でダメだしするのかと思ってたけどそうじゃないんだぁ」
「会長もそこまで良し悪しが解っている訳でもないと思いますよ」
「うぇぅーん・・・そ・・・うね・・・半・・・分くらいは私のせいか・・・な」
「そうですよ」
クスリと笑うユン秘書を横目にもやっとしたものを打ち消したユジンが進路を遮った。
「でもね演りたかったんだもの!演奏者なんて誰でも良いと思ってるでしょうけどせっかくのパーティなのよ!私だってプレゼントの一つくらいしたいわ!」
「だからこんな大事になっているんじゃありませんかね」
苦笑を続けユジンと並んだユン秘書はゆったりした足取りながら階段へ向かっている。
「だってねーテギョンオッパに暫く近づくなって言われちゃったんだものー」
「コ・ミニョssiのデビュー披露でもありますからね・・・ユジンssiが現れたらそれだけで話題も攫われてグループとしても大変困りますよ」
踊り場まで降りたユン秘書は振り返って二階を見上げて微笑み、肩を竦めたユジンは、階下に手を振った。
「・・・大人しくしています」
「そうしてください」
声を立てて笑うユン秘書の姿が見えなくなって暫く、チャイムとドアの音を聞いたユジンはニンマリ顔で三階に駆け上がって行ったのだった。
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