場の空気を整えるならこれを得意とするのはミナムだろうと目の前の状況のやり過ごし方を考えながらあまりのタイミングの悪さに立ち尽くしてしまったシヌは、握ったドアノブから一本いっぽん指を剥していた。
とはいえやっとの思いで離した手の震えに足が全く動かない。
リビングのテギョンとミニョがこちらを向くことが無いよう祈り、
「ったく、参った・・・な」
何度か握り込んだ拳を見つめやっとの思いで踵を返したシヌは、中庭の階段から向かった屋上でガーデンチェアにどっぷり腰を下ろした。
テーブルにはケーキの箱を乗せて。
菓子に合うだろうと買ってきた紅茶も脇に置いた。
見合った光景は、別に珍しくもなんともない。
ふたりは好き合っているのだからくっついていようとじゃれついていようと第三者がとやかく言うことでもない。
言えることではないが一方に懸想していれば胸の内で面白く無いと思うのが心情。
こちらのことも考えてくれと思ってしまうのもまた仕方が無いことで。
「慣れるしかないってことがなぁ・・・」
いつになるやら。
だからといって出て行ってくれとも思えず、自分が出ていくという選択もない。
「ここの生活結構気に入ってるって今更に感じるよな・・・」
連帯感を高めろとか練習時間を無駄にするなとか生活の糧もない駆け出しのアイドルに事務所が用意してくれた家であっても最初の頃は反発もなかった訳じゃない。
ましてここは、テギョンの意向が大きく反映されていたから余計にそう思ったのだ。
「グランドピアノなんていらないと思ってたものなぁ」
口にはしなかった。
言葉にはしなかったが、ファン・テギョンへ周りが寄せる期待感というものは、そこかしこにあって同じグループだから同じスタートラインだからと言われても思っても妬みや嫉みも持ち続けた。
「俺って結構テギョンにコンプレックス抱いてんだよなぁ」
コ・ミナムという新メンバーの加入。
まして当人でもなく女の子の登場で事情はわからなかったが、このままこの子の秘密を守れればそれで良いんじゃないかとさえ思っていた。
密やかな秘密に忍び寄る空気を排除して、あの泣き顔にあの顔に寄り添った男を見るまでは、焦る気持ちは持ち合わせなくて。
「テギョンにあんな真似が出来るとかこれっぽっちも思いつかなかったよなぁ・・・潔癖症だから俺達にだってあんな真似したことないもんなぁ・・・」
慰めが欲しい訳ではないけれど失敗に無言を貫かれる態度というのは、時に不安を煽り、お前の事情だと突き放されるのも言葉の掛けようがないと言われればそれもそうであるかもしれないが、立てた尻尾で体を弾いてくれる猫の様な気まぐれさもたまには欲しいと思ってしまうのもこんな生活の賜物だとも思っていて、昼間の出来事が頭を過ぎる。
「本っ当・・・ジェルミ大事にしないと解散しかねないな・・・こ・・・の先」
散々独り言ちて携帯を取り出したシヌは、ジェルミから届いていたメールを開いた。
「・・・・・・・・・ったくミナムの奴、人に厳しく自分に甘すぎなんだよっ」
テギョンも同じ感想などと知る由もなくケーキと紅茶を手にしたシヌは、内階段へ向かった。
「っんっと今不仲説なんて記事出されたら間違いなくミニョを巻き込むからな・・・」
撮影の合間に近づいてきた記者の顔を思い浮かべ財布から名刺を取り出していたのだった。
リビングのテギョンとミニョがこちらを向くことが無いよう祈り、
「ったく、参った・・・な」
何度か握り込んだ拳を見つめやっとの思いで踵を返したシヌは、中庭の階段から向かった屋上でガーデンチェアにどっぷり腰を下ろした。
テーブルにはケーキの箱を乗せて。
菓子に合うだろうと買ってきた紅茶も脇に置いた。
見合った光景は、別に珍しくもなんともない。
ふたりは好き合っているのだからくっついていようとじゃれついていようと第三者がとやかく言うことでもない。
言えることではないが一方に懸想していれば胸の内で面白く無いと思うのが心情。
こちらのことも考えてくれと思ってしまうのもまた仕方が無いことで。
「慣れるしかないってことがなぁ・・・」
いつになるやら。
だからといって出て行ってくれとも思えず、自分が出ていくという選択もない。
「ここの生活結構気に入ってるって今更に感じるよな・・・」
連帯感を高めろとか練習時間を無駄にするなとか生活の糧もない駆け出しのアイドルに事務所が用意してくれた家であっても最初の頃は反発もなかった訳じゃない。
ましてここは、テギョンの意向が大きく反映されていたから余計にそう思ったのだ。
「グランドピアノなんていらないと思ってたものなぁ」
口にはしなかった。
言葉にはしなかったが、ファン・テギョンへ周りが寄せる期待感というものは、そこかしこにあって同じグループだから同じスタートラインだからと言われても思っても妬みや嫉みも持ち続けた。
「俺って結構テギョンにコンプレックス抱いてんだよなぁ」
コ・ミナムという新メンバーの加入。
まして当人でもなく女の子の登場で事情はわからなかったが、このままこの子の秘密を守れればそれで良いんじゃないかとさえ思っていた。
密やかな秘密に忍び寄る空気を排除して、あの泣き顔にあの顔に寄り添った男を見るまでは、焦る気持ちは持ち合わせなくて。
「テギョンにあんな真似が出来るとかこれっぽっちも思いつかなかったよなぁ・・・潔癖症だから俺達にだってあんな真似したことないもんなぁ・・・」
慰めが欲しい訳ではないけれど失敗に無言を貫かれる態度というのは、時に不安を煽り、お前の事情だと突き放されるのも言葉の掛けようがないと言われればそれもそうであるかもしれないが、立てた尻尾で体を弾いてくれる猫の様な気まぐれさもたまには欲しいと思ってしまうのもこんな生活の賜物だとも思っていて、昼間の出来事が頭を過ぎる。
「本っ当・・・ジェルミ大事にしないと解散しかねないな・・・こ・・・の先」
散々独り言ちて携帯を取り出したシヌは、ジェルミから届いていたメールを開いた。
「・・・・・・・・・ったくミナムの奴、人に厳しく自分に甘すぎなんだよっ」
テギョンも同じ感想などと知る由もなくケーキと紅茶を手にしたシヌは、内階段へ向かった。
「っんっと今不仲説なんて記事出されたら間違いなくミニョを巻き込むからな・・・」
撮影の合間に近づいてきた記者の顔を思い浮かべ財布から名刺を取り出していたのだった。
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