ランチタイムを待ちながら繋ぎっぱなしのチャット画面片隅のカメラ映像にほくそ笑んでいたジェルミは、PCの向きを変えた。
「ね、ね、シャッターチャンス!?」
長い脚を組み替えるソヨンは、ミニョに抱きつかれるテギョンの嬉しそうな顔を鼻で笑ってからジェルミを窘めた。
「その場にいたらよ・・・気づいてないんだから切っちゃいなさい」
促しながらも伸びた指先がPCを閉じてしまいしょげたジェルミは渋々脇に寄せた。
「でもミナムってばすっごい事やってるよねぇ・・・俺も監視されたり・・・な・・・いよね!?」
うっかり水などかけてしまった自分のPCを修理してくれると言ったミナムの顔を思い浮かべ、今頃改造でもされてやしないかと代わりを貸してくれたものの余計なとこを触るなと釘も刺されたなと小さく尖らせた唇に不安を乗せ小脇を見つめたジェルミは、この状況をテギョンとミニョに教えるべきか悩んでいた。
「あの子はね、超がいくつも付けられるスーパーシスコンなの・・・ミニョの為なら気になってるものとか片っ端から調べまくって先回りして・・・悲しませたくないって・・・ちょっとだけ愛が曲がってんのよ」
テーブルに置かれたカップに紅茶を継ぎ足したソヨンは、傍らのチョコレートを頬張った。
「理不尽に思える事も多々あるけど直接的な手は出さずに立ち回っているらしいから我慢もしてるし・・・小学生時代はムド(武道)の本なんかも読み漁ってたから喧嘩も強くなって・・・実はかなり気も短い筈なんだけどねぇ」
繰り返し伸びるソヨンの指先を見つめていたジェルミも喉を鳴らしてチョコを口にした。
「小さい事もかなり気にしてるからファン・テギョンみたいな人にはコンプレックスも刺激されるでしょ」
「そっりゃヒョンは、そこそこ大っきいけどミナムもそんなにちっちゃくないよぉ」
「貴方もそんなに変わらないからでしょ」
「えーひどいなーヌナー俺もそんなに小さくないってばー」
「私より小さいじゃない」
「ヌナがデカすぎるのっ!身長だってスタイルだってスーパーモデルって言われても誰も否定しないってば!俺、平均的なんだよっ!」
クスクス笑うソヨンから顔を背けたジェルミは、携帯を取り出した。
「にしてもさぁこのジェイって誰なんだろ!?見たことないんだよなぁ」
「それこそイタリアンブランドのスーパーモデルよ・・・入隊するのに帰国して除隊してヨーロッパに戻ってたんだけどブランドの進出でまた戻ったのよ」
「へっ!え、?韓国人なのっ!?」
「そうよ生まれも育ちも韓国・・・留学中にこっちでアルバイトしてたわ」
「へー、ミナムってばそんなすっごい友達いるんだぁ」
携帯のページを繰るジェルミの感想にソヨンが首を傾げた。
「何で友達って思うの!?」
「えーだってミナムってばヒョンと似たとこあってさー親しく無い人に触られるのとかそんなに好きじゃないと思うんだよね・・・この間も軽くハグしてきたスポンサーがいたんだけどそういう時さりげに俺に振ってくるし・・・この角度だとキスも出来そうだよ!?こんな近くで話してるって事は、ミナムとかなーり親しい人かなぁ・・・って」
携帯の手元操作を続けるジェルミは、頭部を見下ろすソヨンの表情など気にするゆとりは持たずニヤニヤ笑っている。
「写真は瞬間だけど真実はヒトの想像に惑わされるのよ」
「切り取り方で変な噂も立てられるよねー・・・ね、ヌナ一杯持ってるでしょ!?」
「アイドルなんだから夢のないこと言わな・・・」
クスリと笑いかけたソヨンは、勢いよく開かれたドアを振り返った。
「大変です母様!」
抱えた花束をソヨンの傍らに置いたジアが、息を切らしながらソヨンの前に立った。
「叔父上がいらっしゃいました」
眉間を寄せる間に近づいてきた足音にもう一度振り返ったソヨンは、スハを見上げた。
「暇なの!?」
「いえ、お仕事のついで・・・だそうです」
「・・・暇としか思えないわ」
きょとんとするジェルミの前で滞在中のスケジュール変更を告げられたソヨンは、うんざりした顔で頷いていたのだった。
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