自動点灯のガーデンライトにふと目をやりながら車を降りたテギョンは、この頃は、そうそう珍しくもなくなった誰もいない宿舎を見上げていた。
「ヒョンニム、入らないのですか!?」
数個の紙袋を手に先に玄関に向かったミニョは、ドアを開けて振り返っている。
「ああ、今、行く・・・」
開け放したままの扉から犬小屋で寝そべるジョリーに手を振ったミニョは、いそいそ駆け出しバタバタした足音をクスリと笑ったテギョンも身軽な心持をジョリーに向け首を傾げられている。
「あ!?お前、それは失礼だろ!飼い主に似てきたんじゃないか!?」
上目のジョリーにそんなことを言っても通用はしない。
しないが、スケジュール片手にテギョンを見上げたジェルミの目が、何か言いたそうで、何か言って欲しそうで今のジョリーと重なっていた。
「お前に心配されるようじゃ、俺もまだまだだな」
ジェルミもミニョが好きだったと知ったのは、つい最近だ。
泣くほど、あのジェルミが泣いたのかと当初は信じられなかった。
コ・ミナムが女だとメンバーに知らしめた発表会後に事態の収拾を図ったあの時に妙に嬉しそうだったのは知っていてもそこまでの想いなど知る由もなく、ミニョのアフリカ滞在その後のスキャンダル、大きな出来事の中でジェルミもまたそこに居はしたが、シヌの行動が逐一突飛すぎて、当事者ではない多少の機微はあっても何ら変わらない日常を過ごしていたと気にも留めていなかった事を反省させられた。
お前は変わってくれるな。
そう思うのは、勝手な言い分だ。
シヌの視線が痛い。
シヌの行動が怖い。
そう思うのもまた勝手な思い込みで。
ミナムの指摘が一々的を得ているだけに実は焦っている事もある。
「俺とシヌがぶつかるなら止めるのは、ジェルミだろうな・・・お前が鎹だと最近気づかされたけ、ど、A.N.Jellを守るなら俺もあいつもお前をもっと大事にすべき・・・か!?」
微動だにしないテギョンの独り言を構ってくれるのかとばかりにゴロゴロ動きながらジョリーが聞いていた。
腹まで見せるジョリーを見下ろしながら鼻で笑ったテギョンは、一睨して玄関へ向かい、戻ってきたミニョに腕を引かれた。
「ヒョン遅いです!何をしていたのですか!?」
「ああ、ちょっと考え事」
リビングに引っ張って行かれたテギョンは、並べられた皿に微笑んで、ミニョの差し出したスプーンを受け取った。
「アイスクリームも盛り付けましたよ!早く食べましょ!」
「ふーん、良い心がけだな!一人で先に食ってるのかと思った」
「むむ、そんなことしません!ヒョンが買ってくれたのですから一緒に食べます!」
何気なく肘にまつわる腕のまま座り込んだテギョンは、離れようとした手を握り、きょとんとしたミニョが首を傾げた。
「ヒョン、ニ・・・ム!?」
「お前解ってるか!?」
「何がですか!?」
アイスが溶ける心配をする視線に頬を擦れ合わせ耳元に近づいたテギョンは、顔から火が出そうなほど慌てふためきまた離れようとするミニョの口にスプーンを突っ込んで満足そうに笑っていたのだった。
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