翌日、聞き終えた話にグッタリ長い息を吐きだすアン社長を横目にテギョンは、優雅に茶を啜っていた。
「そ、れで・・・ミナムには何て!?」
「俺がどうこうできる問題じゃないし、シヌだって判ってやってることだろ!俺の進言で余計な軋轢を産みたくないって言ったさ」
「・・・・・・おっ前等、上手くやっていくんじゃなかったのかよ・・・」
報告してくれることは良しとしてもベットリ張り付く脱力感を拭いたいと何度も髪を撫で上げるアン社長は、それでもまだ肩を落とした。
「十分上手くいってる」
「不仲説なんて格好のネタでしかないんだぞ・・・三角関係なんて・・・」
ない方が良いに決まってる。
それを誰より痛感しているのはテギョンに他ならない。
コ・ミニョは俺が好きだ。
それは胸を張って言える。
シヌなどそういう対象の範疇ではない。
良いお兄ちゃん。
ならばミナムと同等だ。
ミナムと。
「だからっ三角関係なんて最初っからないって言ってるだろ!一方通行なんだよ!」
良いお兄ちゃんというフレーズが妙に引っかかるのは、ミニョとミナムの関係がテギョンの見知っている兄妹のそれよりもより一層近く感じるからで、そのミナムと同等だとしたら、ミナムとしているあれやこれをシヌとも出来るということなのかと頭に靄が広がる。
「マ・室長はシヌだと思ってたと言ったぞ・・・火のないところに」
「煙を吹き上げたのは、マ・室長っだろっ!あいつが、話をややこしくしたんだっ!」
テギョンも何かを拭うべく髪をかき上げて立ち上がった。
「あんた誰の味方だよっ」
「仕事をしてくれる奴に決まってるだろう」
持ち上がったイライラの沸点は、素っ気ない返事にあっさり下がっていった。
こんな話をしに来たわけじゃなかった。
アイドルだからと口やかましく言われ続けた注進を最初に破ったシヌは、テギョンの知らないところで好きな女がいるとアン社長に報告をしていた。
その女との未来も夢見た報告を。
コ・ミニョは、初めから俺を好きだった。
それをアン社長に言わなかったのは、あの一か月に起った葛藤のあれこれを今更に説明するのも聞かれるのもテギョンが避けたからだ。
「俺たちは商品だったな」
「シヌはなぁ、ドラマの宣伝もあるから多少のスキャンダルも暫くは、大目に見たいとこなんだよ・・・・・・が、私に報告がない異性絡みは・・・お前を収束させたばかりだからいただけないのは変わらんぞ!ああ、そっ」
踵を返したテギョンの背中に伸ばした指先が振り返った無表情に怯まされデスクを彷徨った。
「・・・モ・・・ファランssiがな」
握ったペンに込めた力を声にも込めるアン社長は、真っすぐテギョンを見ていた。
「ソンベ(先輩)ここに来たぞ、謝罪と・・・息子を宜しく頼む・・・ってな」
顔に変化はない。
変化はなくとも無表情に不快が見える。
目を逸らしたい気持ちを懐にアン社長は更に力強く続けた。
「これは、A.N.entertainmentにとっても重大事なんだぞ!私以外知ってるやつはいないが、今後も一切オフレコだ」
何を言ってやがる。
そんなことを思いながらテギョンは、ドアノブに手をかけた。
「・・・あの人がそうそう大人しくしててくれれば良いけどな」
「・・・お前には辛い思いをさせた・・・と言ってたぞ」
「それが本心ならな」
「おっ・・・」
「この話は俺の問題だ!口を出すなっ」
「なっ・・・年長者のアドバイスは聞いとけよー」
閉まるドアの隙間に薄れるアン社長の声に漸く表情を変えたテギョンは、舌打ちをして歩き出した。
社長に言ったのか。
息子であると。
長年直隠した事実を第三者に。
同席した打ち合わせもレコーディングも他人行儀だったのに。
そういえばとミナムが言っていたことを思い出したテギョンは、携帯を取り出して急ぎ足ながら電話をかけ始めたのだった。
『お家に帰ろう』に近くなってきたな........(笑)円舞曲に戻さねば*****≫))))(/_x)/.
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