駐車スペースを見下ろすヘイと耳を澄ましたミナムが同時に声をあげていた。
「帰って来たわ」
「帰って来たな」
雑誌を放り投げたミナムは、踵を返して外階段を降り始めたヘイを追いかけ、シヌは、ミニョに行かないのかと聞いていた。
「えっ、あ・・・は・・・い」
戸惑いながら腰を上げたミニョは、シヌを見下ろした。
「えっと・・・そ・・・の・・・」
笑ってと頬を撫でられた出来事が胸を突きあげる。
笑えてないのかとシヌに聞きたい気持ちが、擡げた頭で渦巻いている。
「台詞の練習台にしただけだよ!もう・・・行って」
これ以上話は無いという雰囲気を醸すシヌは、拾い上げた雑誌に目を戻し、これ以上は聞けないと悟ったミニョは、後ろ髪を引かれながら内階段へ足を向けた。
「・・・避けてた・・・のかな・・・」
避けられてるとは思っていても避けてるとは思っていなかった。
無意識といえばそうなのかもしれないと思いながら階段を降りるミニョは、今突きつけられた現実に立ち止まって、後ろを振り返った。
「ヒョンニムと一緒にいたい・・・けど・・・」
「余計な事を考えるっな」
「ふぁぇっ!?」
ポカンと紙で叩かれた後頭部を抑えてもう一度振り返ったミニョは、引かれた腕によろめき、鼻腔を擽る匂いに顔を埋めた。
「あーあ、もう、我慢するのも飽きて来たな」
「へ!?」
ふわりと回った腕にぎゅっと締め付けられ、耳朶の口付けにソワソワしたミニョは、行き場を探った腕でシャツを握り締めた。
「ヒョ・・・」
「た・だ・い・ま」
低く甘い囁きが耳孔を撫でる。
お帰りなさいと云えない唇が喘ぐ。
上手に出来ない息継ぎをテギョンの唇と手によってされていた。
「大丈夫か!?」
両手で上向かされた顔が逸らされた胸がコクンと落ちるのを待っていたテギョンは、大きな目の横にもう一つ口付けをしながら背中を擦った。
「大丈夫だな」
「ヒョ・・・ニム」
「無い頭で余計なこと考えるなよ。シヌに何か言われたのか!?」
「どっ・・・」
「あーいたわよっ」
どうしてという声を呑み込んだミニョは、テギョンの背後のヘイを見つけると慌てて横を向き、テギョンもミニョを庇う様に向きを変えた。
「あんたねぇ・・・」
「・・・お前か・・・」
開けた口を片手で遮られたヘイが僅かに振り返ってミナムを睨んだ。
「早っく!ヒョンの部屋で良いからっ!入れっ」
顰めた声と開いた手で主のいない扉を開けたミナムは、ヘイを押し込み、テギョンの手首を引っ張った。
「おいっ」
「しっ、静かにしろっ!話があるっ!」
タメ口で強引に腕を引くミナムに怪訝な顔をしながらミニョの手を引いて自部屋に帰り着いたテギョンだった。
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