両腕を見上げては笑うを繰り返し、足取りも軽いリンを挟んでテギョンはミニョと見合わせた顔にシルクハットを深く落としていた。
「あー、オッパ!お顔隠しちゃだめでぇすぅー」
「・・・っざけんなっ撮影でもないのにこんな格好させやがって」
「着てやるって折れたのオッパじゃないですかぁ」
「こいつが下のスタジオで暴れるっていうから折れたんだよっ」
高い並木を見上げたミニョは、きょろきょろしながらリンにイベント会場の説明を受け屈んで顔を覗き込んでいる。
「ふーん・・・リーン何をしたのですかぁ!?」
「落書き!」
「何に!?」
「アッパのギター」
「へっ!?」
ぎょっと立ち止まったミニョは、マジマジ顔を顰めるテギョンを見つめた。
「俺の大事なギターに落書きしようとした・・・んだよ」
グッと後ろに腕を引かれたリンはミニョの腕を引き直している。
「そ・・・うなのですか!?」
慌てて歩き出したミニョは、頭を抑えて謝った。
「価値を解ってやりやがるから質が悪すぎる!!」
「本気じゃないでしょ!?」
「本気だったー!」
びっくり目のままリンを見下ろすミニョは、そろりテギョンを盗み見た。
「やるときゃやるんだぞこいつは!この前は、スピーカーに落書きしやがったからな」
「落せるペン使ったしお掃除もしたもーん」
繋いだ手を勢いよく振り回すリンは、テギョンに睨まれている。
「知っててやってます!?」
「知らなーい」
「知っ、てますね・・・」
「知ってるに決まってる・・・鍵開けられる癖にそっちには見向きもしないんだぞ」
軽い溜息を吐いたミニョは、困り顔で首を振った。
「賢いの!?」
「ずる賢いんだ!」
「あんまりアッパをイジメてはダメですよ」
「嫌っ」
くるんと後ろを向いたリンは、ミニョとテギョンの手をくっつけてニッパリ笑っている。
「だってアッパ、オンマ独り占めしてるからにこにこしててずるいもんっ」
「はぁあ!?」
「ふぉぇ!?」
繋いだ手の上に手を重ねて後ろ向きで歩くリンがふたりを見上げた。
「・・・お、前、コレは、仕返しか!?」
燕尾服の襟を引いたテギョンは、ニンマリするリンに顔を寄せて見せつけている。
「アッパ嫌いでしょ!?こういう格好するの」
「仕事なら着るけど・・・な、こういう場所は・・・暑苦しい・・・だろ・・・」
「で、も似合ってます!」
「オンマが嬉しいから良いのー!」
ぎゅっとミニョの腰に抱き付いたリンが駆け出した。
「・・・ふっく雑・・・」
「・・・・・・俺の方が複雑だ・・・何であんなにお前の事ばっかり好きなんだよ!」
足を止めたミニョにテギョンも立ち止まり見合わせた顔で繋がった手を見下ろして握り直している。
「あ、あれはーオッパの方が好きって事でもありますよねー」
「あ!?」
「オッパの喜ぶ事して・・・るじゃないですかぁ・・・」
絡む指先の握りを開いたミニョは、腕越しにテギョンの顔を見上げて赤くなり、あさっての方を見たテギョンは、舌打ちをしてリンを追いかけ妙に背筋を伸ばして歩き出していたのだった。