スタジオアルファと書かれたプレートを見上げ、顔を見合わせたリンとユソンは、鍵を開けこっそり中へ入って行った。
「・・・ったく、誰が見てても関係あるまいに・・・秘密基地のノリか!?」
曲がりこむ手前で閉まる扉を目に入れたヒジュンは、後頭部を掻きながら欠伸を噛み殺し、着信を告げる携帯を見つめて舌打ちをしている。
「っと、忙しかったんじゃねぇのか」
(そんなに忙しくないかな)
穏やかなゆったりした口調に語尾を拾われた挨拶に驚きながら苦笑を漏らした。
「今のお前に電話をかける余裕があるとはな!」
明かりとりのガラスが縦に長く備えられた二重扉を開けている。
(ちょ・・・とぅお願いがありまして・・・)
「気持ち悪いな、さっさと吐いてスッキリさせろ!」
大きなスピーカーを横切り立てかけてある数本のギターを眺めた。
(・・・・・・ソンベがスッキリしたいだけでしょ!俺のこの言い難い繊細な気持を考えてくれます!?)
「言いたくないなら電話を切るだけだし、いつまでも待ってやるほど俺がお優しくないってのは、知ってるだろ!?」
ネックを握り締めソファに座り込んだヒジュンは、部屋を見回して立ち上がっている。
「グダグダ躊躇してないでさっさと話すんだな」
(じゃぁ、ソンベも話してくれます!?)
「何!?」
スピーカー上の無造作な書類を漁り始めた。
(まぁとぼけると思ってますけどソ・ジュノssiがユソンに興味ありありな近況について)
「・・・お前の調査力なら、それくらいとっくに知ってるだろ!?お前の手中にいるから俺に話す必要も無いと思ってる筈だ」
息を呑み気先を折る皮肉を込めるヒジュンは、小さな舌打ちをしている。
(あは、流石ソンベ!で、話ってのは、ユソンとリンを少し誘導してほしいんですけど)
分厚い封筒を捜し当て、手近な引き出しからハサミを取り出した。
「随分難しい事をさせる気だな」
(ソンベの所で遊んでるでしょ!?だから簡単だと思いますよ)
「あいつら可笑しなオリジナル作って遊んでるから既存品に興味ないんじゃないか!?」
(ちょっと譜面を混ぜるくらいで大丈夫です!それと食事に連れてってくれます!?)
怪訝な顔で詰まるヒジュンの返事を待たず笑い声が響いている。
(テギョンの許可は貰ってるので問題ないですよ!迎えはテギョンが行くそうです)
了承の返事に相手が電話を切る前に通話をOFFにしたヒジュンは、封筒から出した冊子を手に緊張した面持ちでソファに座り込んでいたのだった。