「オンマー、僕、ピザ食べる!」
「え!?あ、ああ、ええ」
メニュー表を拡げていたリンの一言で、シヌやテギョンの視線が逸れた。
「何でも作って貰いなさい!」
前のめりのユジンにミニョもリンの指差す料理名を見て頷いている。
「えっと、じゃぁジュノssiお願いできますか!?」
「もう作ってますよ!誰かさんの我儘より簡単だし、リンの好きそうなものは疾っくに選んであるから」
「手際は素晴らしいのよね・・・」
「今の俺は、お前の専属料理人じゃないんでね!お客様の要望が優先だってこと!」
にっこり微笑みあうリンの前でユジンが眉間を寄せた。
「なによ!私もお客でしょ!ちょっとグリルしてくれれば良いだけじゃない!」
「あれこれ注文付け過ぎなんだよ」
「おい、ユジン!お前妊娠しているのか!?」
食い気味に声を掛けたテギョンに腰を上げかけたユジンが、睨み顔で向き直り、睨み返されている。
「う、あ、ああ、そ、うみたい」
「お酒は体に良くないのですよ」
スットンと腰を落としたユジンは、掴みかけたグラスをミニョに抑えられ代わりのグラスを握らされた。
「う、セオンニに言われると弱いんだなぁ・・・」
「っとにな俺の言う事は聞かないくせにミニョの言う事は良く聞く!」
「何気に誰かさんが女性に甘いからだろ・・・で、ジュノssi!さっきの話だけど・・・」
ギロリと鋭い睨みを向けられても涼しい顔のシヌは、ジュノへ促している。
「ああ、イ・ユンギssiですか!?そいつの妊娠が判ったんで会長が進めていた準備を急がせているんですよ・・・元々それが条件の政略結婚でしたから」
「せ・・・」
派手な音でグラスに水を戻したテギョンは、ぎょっとしハンドバッグを漁るミニョから慌ててハンカチを受け取りユジンを見つめた。
「何よっ!?恋愛なんて出来る立場じゃなくなっちゃったのよ!オッパが、音楽の道に進むなんて誰も思ってなかったのに!私と違ってアボジからも早々に離れちゃうしピアノは続けてて芸能の世界に興味はあるみたいだけど行かないんだろうってみーんな思ってたんだからっ!」
早口で口を曲げるユジンに口を拭ったテギョンは、大きな大きな舌打ちをしている。
「俺のせいみたいに言うな!大体お前と俺は血縁でもないんだぞ!爺が何を考えてたか知らないがあんな大きな会社経営なんかが俺に務まる訳もなし後援者ってだけで俺なりの恩は返してる!」
「息子と外孫って思ってるのは、昔も今も変わらないのよ・・・オッパが、芸能活動始めた頃に将来の旦那様候補ってユンギssi紹介されたんだか・・・ら・・・」
「そんな前から知り合いだったの!?」
サーブの手伝いをしていたジェルミが僅かにびっくり顔でお皿を置き、驚いたユジンも視線をあげた。
「ユンギssiは知らないんですよ!だってあの頃、家出してたらしいし・・・」
「あ、ああ、その頃・・・か・・・」
シヌとテギョンと目を合わせている。
「オッパ達が知り合ったのその頃なんでしょう!?私留学してたから久しぶりにテギョンオッパのピアノ聞けると思ってたら全然会いにも来てくれないしさっ!」
「昔の事を蒸し返す為に呼んだのか!?」
「違うわよ!」
「まさかまたスランプだとか言うんじゃないだろうな・・・」
「まさか!あれ以来そういう事はないわ!特効薬も見つけたし・・・」
「女性は妊娠するとまた変わるって言いますからね」
一際大きなお皿を両手にしたジュノが、ジェルミと大小様々な皿を並べ始めた。
「・・・お前も随分変わったっけな」
「えー、ミニョは変わってないよー」
「俺に散々な意見する様になっただろ・・・」
「それはヒョンの性格を肌で感じる様になったからでしょ」
「そうですよ!オッパは理不尽な意地悪だって解っ・・・ひゃい」
テギョンの腕がミニョの左頬を引っ張っている。
「こいつが俺に意見するのもお前のせいだ」
「僕、アッパの事一番尊敬してるもん!」
取り皿を掲げピザを受け取るリンは、テギョンを睨み、ミニョを見て首を曲げた。
「「ねー」」
「こういう所が変わったって言いたいんだろうけど、お前も十分変わったからな!」
テーブルの上で握手するリンとミニョを横目にシヌがテギョンにグラスを差し出し、食事を始めようと促していたのだった。
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