電話を横目にリンから冊子を受け取ったテギョンは、早速内容を確認し始めた。
「だから、予定もないのに来たんだ」
漸く合点がいったと頷くシヌがリンを持ち上げ膝に乗せている。
「ね、ね、オッパ、いつユジンssiとお話をしたのですか!?」
「あ!?撮影が終わる頃」
「え、でも、携帯切ってましたよね」
「SNSで割り込まれたんだ・・・ミナムの記事チェックしてたから・・」
「ホテルって!?国内にいらっしゃるのですか!?」
「ああ、今日帰国したらしい・・・」
「え、じゃぁ、ご挨拶」
「行かないから電話するな!」
「ねーユジンssiと連絡取れたよー、ご馳走してくれるって!皆行くでしょ!」
携帯を取り出したミニョの手を抑えたテギョンが、がっくり項垂れた瞬間クスリと笑ったシヌがリンの両目を塞ぎ、廊下から戻って来たジェルミが飛び退き、アン社長が受話器を置いた。
「ヒョ!?ヒョン怖っいっからっこっち見ないでー」
振り返ったテギョンに手を振るジェルミは、壁に背中をくっつけている。
「だっ、だってー俺、すっごい久しぶりだもん!会いたいじゃない!!」
素早くテギョンの後ろを駆け抜けたジェルミは、ミニョの陰に座り込み手を握った。
「ね、ね、ミニョもそう思うでしょ!」
「え、ぇえまぁ、お会いしたいです・・・け・・・ど・・・」
ジェルミを見て横を見たミニョは、体ごと向きを変えている。
「でででででもっ今のオッパ怖いですぅ」
「頑張れミニョ!ミニョの一言で今日の俺達の夕飯も決まるっ!」
ジェルミと顔を見合わせ手に手を握り合うミニョは、意を決した顔をあげた。
「却下」
パタンと冊子を閉じたテギョンは、ミニョの伸びた腕を躱している。
「まだ何も言ってないじゃないですかぁ」
ソファに倒れ込むミニョを無視して社長のデスクへ向かったテギョンは、ペンを取り出した。
「仕事を受ける!曲目はユジンのオリジナルで良いのか!?」
「ああ、まだ何も決めてないからお前のオリジナルでも良いが、リンssiはどうする!?」
サインを書き込むテギョンの前でアン社長は、立ち上がり、ジャケットを手にしている。
「そっちも本人と相談する」
「やるだろ」
「やると言われるのは目に見えてるが・・・学校もあるしミニョの撮影が終わるまでは引き受けない」
「ああ、それで良い!ミニョssiのスケジュールも一緒に調整する」
「そうしてくれ」
冊子を受け取り持ち去ったアン社長を見送り、駆け寄ってきたリンに抱き付かれたテギョンは、嫌そうに見下ろした。
「アッパー」
テギョンを見上げるリンはにっこり微笑みながら体を揺らしている。
「・・・・・・ったく・・・シヌに何を言われた!?」
「コモと遊びたーい」
頭を撫でられ抱き上げられたリンは、テギョンの首に腕を回した。
「明日は、オンマの撮影ないでしょー!アッパもお休みでしょー」
「お前は、早く帰ってミニカーで遊びたかったんだろ!?」
「コモと遊ぶ!」
首を傾げるリンの背後でミニョとジェルミが拳をガッツリ示し合わせ、シヌが立ち上がっている。
「暫く一緒に食事していないし、たまには良いだろ!?」
「ったく、リンを使うなといつも言ってるだろ!」
「お前がリンにより甘いのは周知の事実だ」
通り抜けのシヌの小声に目を瞠ったテギョンは、リンの手に口を塞がれた。
「アッパ行くでしょ!?」
「オッパ行きますよね!」
「ヒョン早く行こう!」
メールを打ちながらミニョの腕を引いて行くジェルミの背中に大きな溜息を吐いて暫く、リンに促されて歩を進めたテギョンだった。