先頭切って社長室のドアを開けたテギョンは、まだそこにいた女性記者を一瞥し軽い会釈をして踵を返していた。
「あ、テギョンssiも!何かコメント頂けませんか!」
慌てた素振りで呼び止められたテギョンは、舌打ちをしつつリンの顔を肩に押し付け振り返って笑顔を振りまいている。
「いえ、A.N.Jellは既にインタビューを受けたと聞きました・・・誰の話であろうがそれが総意なのでそのまま書いて頂いて結構」
「あ、いえ、でも、コ・ミニョssi」
食い下がろうとする記者の前にシヌが踏み出した。
「すみませんが社長と打ち合わせの時間なんです!ジェルミも汽車の時間があるので今日は、もうお帰り下さい」
時計を見る素振りとしたり顔の笑みで女性をエスコートする様に促したシヌをアン社長がきょとんと見ている。
「え、あ、ああ、忙しいで、すものね・・・あ、では、また・・・」
戸惑いを纏いつつ社長室を出て行く記者をジェルミが廊下へ見送り、ドアを閉めた途端大仰に声を殺して笑い出した。
「今っ今時汽車ってシヌヒョン何か映画でも見たのー!?」
「あ、ああちょっと、ドラマ用に貰ったプロット見過ぎたかな!汽車が鍵なんだ」
失態に照れるシヌは、ミニョの口を隠した苦笑に小突く真似をして背を押している。
「ったく、そんなのどうでも良い!それより社長!」
ソファに座ったミニョは、下ろされ駆け寄るリンを膝に乗せデスクに戻るアン社長とテギョンを見た。
「お前達と打ち合わせなんて予定してたか!?」
テギョンに居並ぶシヌとジェルミが首を振り、アン社長は首を傾げながら座っている。
「してる訳ないだろ!どこまで知ってた!?」
「ん、ああミナムなら昨夜の内に報告があった・・・ヘイssiの事務所に以前相談を受けたんだが、その頃ミナムも状況把握は出来てないと言うからこっちでも調査させてたし、ミナムも対象にされちゃA.N.entertainmentも困るからな」
「俺達には、連絡も無しかよ」
「お前達にまで害は無いと判断しただけだ・・・それにお前等今は事務所の車使ってるだろ!スタッフも何人かはついてるからな」
大きく頷くシヌとジェルミをテギョンが睨みつけた。
「そっ、そういえばミナムって、ここ半年位大人しかったよねー、ヘイssiの為だったんだっ・・・ね・・・」
視線を逸らすジェルミが、シヌの袖を掴んでいる。
「あいつは他にも黙認されてる事があるだろ」
「してる訳じゃないが、最近のミナムは、自分で仕事も採って来るんでな」
アン社長の言外とにやけ顔にテギョンが仏頂面をした。
「・・・俺には必要無い才能だ」
「あいつは、あいつなりにデビュー当時よりもA.N.Jellの事を考えてるぞ!最初の頃に比べれば、俺に細かな報告もしてくれる分大人になったし、目下のA.N.entertainmentの悩みは、練習もしてないジェルミの方だぞ」
一斉に向けられた視線にジェルミが大きく首を振っている。
「ったく、どいつもこいつも勝手な事しやがって・・・」
テギョンが大きな舌打ちをした。
「何かあるの!?」
「もしかしてコレか!?」
手にした封筒を翳して振るシヌへテギョンの目が大きく見開かれている。
「テギョン宛だけど社長に渡してくれってヒジュンから預かったんだけど」
「お!来たか」
封筒を開けるシヌへアン社長が腕を伸ばした。
「俺宛なんだろ!まず俺が見るべき代物だよな!」
取り出された書類を横から掻っ攫うなりミニョの隣にドカリと腰を下ろしたテギョンだった。
にほんブログ村←ポチッとね❧(^▽^)o