撮影セットの端で携帯を手にしたテギョンが、リンと通話の取り合いをしている。
「断ると言っているだろう」
「僕は良いー」
何度目か判らない溜息を抱えたリンの顔を睨みながら吐いたテギョンは、携帯を取り上げようとする手を払った。
「ったく、お前と関わると碌な事にならないのは実証済なんだ!ましてリンと一緒何て冗談じゃない!」
(何よっ!トラブルメイカー呼ばわりする気!?)
「トラブルメイカー以外の何者でもないだろう」
(オンニよりは、マシだと思うけど・・・)
「・・・どのオンニ・・・だよ・・・」
(えっ、そりゃぁセ)
「ふざけんなっ!お前がいなけりゃトラブルなんて俺が阻止するっ」
(出来ないくせにー)
ケラケラ笑う通話相手に目を細めるテギョンは、盛大な溜息を吐いている。
(あー、もう、だってさ、ジュノオッパと仕事もしてるんでしょ!ちょっと位付き合ってくれたって好いじゃない!)
「旦那ほっぽって元カレと浮気が優先かよ!」
(・・・・・・・・・・・・・・・な、んで知って・・・)
長い沈黙後の返答にテギョンが驚いていた。
「ユッンギが調べてた・・・俺が口出す事じゃないから黙ってたけど・・・お前等、随分前から知り合いだろ」
(・・・そうだけど・・・・・・清い関係だし)
詰まった声に気まずい顔と怪訝な顔をしたテギョンは、リンに額を叩かれている。
「ねー、コモ―、いつまでいるのー!?」
リンがテギョンの携帯を引っ張った。
(えーっとね、暫くは韓国にいるわー!帰国したのは、まだ、お爺様しか知らないからいつものホテルにいるの)
「遊びに行っても良ーい!?」
(だからー、オッパも一緒に来てほしいのよー!オッパの力が必要なんだってばー)
「知るかっ!お前の戯言に付き合ってる暇はないっ!用があるならそっちから出向いて来いっ!」
「あー」
リンが伸ばした手を躱したテギョンは、通話を切っている。
「切っちゃった」
携帯を見つめるリンを見たテギョンは、舌打ちをして踵を返した。
「良いんだよっ!あいつのお願いなんてのは、聞かない方が良いんだ」
「でも、アッパにお手伝いしてほしいっておねがいでしょう!?」
「行き詰まる度に俺を頼るとかアボジの育て方は間違っている」
「ハラボジは、間違った事言わないよー」
「音楽家の旦那を貰ったんだからそっちを頼れば良いんだ」
「ユンギヒョンとコモじゃ、世界の幅が違うもーん」
「あ!?なんだそれ!?」
撮影現場に戻ったテギョンとリンは、どちらも唇に指を充てている。
「コモって、音符が降って来るんじゃなくて音符が流れて来るんでしょ!?ユンギヒョンは、降って来るけど一筋の光みたいなんだって・・・でね、アッパは、どっちもあるんだって」
テギョンの耳元でリンが囁き、テギョンもリンに囁き返した。
「誰がそんな事言ったんだ!?」
「コモだよ!ユンギヒョンも言ってた・・・アッパの方が音楽性を近く感じるんだって」
「・・・俺は、そんなもの感じたことはないぞ」
「それはーアッパが天才だから」
にんまり笑って抱きしめるリンの腕に返答に詰まっていたテギョンだった。