「引き続きお願いします・・・ええ、では・・・」
溜息で通話を切断したユンギは、キーボードを乱暴に叩きながら航空会社へアクセスしていた。
「チッ・・・あの小娘今どこにいる・・・」
机の上に拡がるコンサートホールのパンフレット一枚一枚に目を通している。
「あぁあぁあー、もう!聞きたいことがあるってーのに!!!」
大きな声と共に立ち上がり、窓辺に向かおうとした背中を震わせ、入り口を凝視した。
「・・・・・・・・・な・・・んだ・・・よ・・・ノックくらいしろよ」
「しましたよ・・・ぁ・・・・・・い、いえ、貴方らしくない・・・な・・・と」
「俺らしい・・・俺ってこういう奴だろっ」
葛藤のままの態度に呆れながら散らばったパンフレットを拾い上げたヒジュンは、纏めてユンギの机に打ち据えている。
「ここでのイ・ユンギがそれでは、困ると言っているのです!」
手帳を拡げるヒジュンに剥れたユンギが舌打ちをした。
「プライベートの貴方が、そんななのは知ってますよ・・・何年の付き合いだと・・・被ってる毛皮が厚すぎて正体忘れてたくらいなのに・・・」
「お前だっ・・・あ、ぁあいや、お前は被ってないよな・・・そんな奴だわ・・・」
振り返り、思い直した顔で机に手を置いたユンギは、ヒジュンを見上げている。
「どんな奴です・・・」
「・・・陰険・・・」
「では、ご希望の」
「答えなくて良いっ!!!」
ページを捲りかけたヒジュンの手元をユンギが抑えた。
「あ、ぁあ違う・・・何だよ・・・何か用なんだろ・・・」
両手を挙げ背を向けたユンギに苦笑を漏らしたヒジュンは、咳払いをしている。
「・・・ユジンssiが昨夜帰国されています」
紙を捲る音とペンを走らせる音に暫く言葉を止めたユンギが振り返った。
「俺に連絡無いんだけど・・・」
「今報告しているじゃないですか」
「直接連絡位寄越しても良いんじゃないか!?」
「極秘帰国ですので、いつもの事だそうですけど・・・」
淡々と報告をするヒジュンにユンギがまた剥れている。
「それって、爺様の意向!?」
「ユジンssiがそれだけ可愛がられているのでしょう・・・知らなかったのですか!?」
顔を逸らしたユンギが、呟いた。
「名目だけの奥さんらしい・・・」
「嘘つきですね・・・」
「それでも良いって言われたからな」
「契約結婚ですものね」
手帳から目を放さないヒジュンを睨みつけたユンギは、また背を向けている。
「お前嫌いだ」
「10年来のお友達だそうですよ」
クスリと笑ったヒジュンが、手帳を閉じ、机に置いた書類を開いて背を向けた。
「ユジンssiとジュノssi」
スタスタ入り口に向かったヒジュンの声に振り返ったユンギは、報告書と書かれた書面を凝視し慌てふためいている。
「お前なんて大っ嫌いだー」
閉まる扉に向かって叫んでいたユンギだった。