「何で俺に連絡くれないんだよー!?知ってたらもっと早く帰ったのにー」
深夜の宿舎のキッチンで後輩が差し出したジュースに首を振ったジェルミは、スーパーの袋から栄養剤を数本取り出し蓋を捻っていた。
「そ、そんな事言われても、俺達パニックでしたしー」
「そそそうですそうです!ヒョン達がいると思ったからぁ・・・」
顔を見合わせ交差させた腕で背中を震わせる後輩の顔をカウンター越しに見上げていたジェルミは、置かれたタッパーに目を移している。
「って、ことは、それ、ミニョが作った料理!?」
「そうだろうな・・・書置きもあった」
紙を見るシヌが言い終わらない内におかずを摘み上げたジェルミが、口に入れて目を細めた。
「うっまーい!何これー!」
パクパクと次々に摘んでいる。
「ジェルミソンベ、ダイエット中じゃ・・・」
「いや、あ、うん、そうなんだけど・・・」
おざなりに返事をするジェルミを笑ったシヌが、後輩達に箸を渡した。
「せっかくだから、お前達も喰っとけば」
「え!?え・・・良、いんで、す、か!?」
「良いんじゃないか・・・残しておいても勿体ないだろ!?」
「いや、え、そ」
「お前達もダイエット中か!?」
「い、いえ、それは無いです!むしろもう少し太れと言われてる位で!」
「あー!何だよーそれー、俺への挑戦ー!」
ジェルミがふたりに箸を向け、シヌに制されている。
「ジェルミに付き合ってここで夜食食うの我慢してるんだろ」
リビングに置かれた紙袋を指差したシヌに後輩が気まずそうに眼を伏せた。
「え、あ、そうだったの!?ゴメン・・・」
タッパーの蓋を開けていたジェルミが、ふたりに座れと促している。
「それにしてもやけに豆腐料理が多い」
「ミニョが最近嵌ってるからな・・・ほら、ファン家の食卓とかなんとか・・・」
「ああ、雑誌の連載!え、でも、テギョンヒョン豆って食えるの!?」
「食えるんじゃないか!?というか、あいつのアレルギーなんて俺が知るかよ」
「えー、シヌヒョン冷たーい!もっと言い方あるでしょー」
「ここにいた時だって食事は別だったろ!ミナムが来てから、あいつに結構なアレルギーがあるって知ったくらいだし」
人数分のお茶をテーブルに置いたシヌも腰を落ち着けた。
「・・・・・・そういえば・・・そうだねぇ」
箸が止まらないジェルミは、満面の笑みで、次々口に運んでいる。
「それにしてもテギョンssiのオーラというか・・・俺達本当に困りましたよー」
シヌとジェルミが帰って来るまでの宿舎での嘆きが遅くまで吐露されていたのだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「ったく、俺は先輩だぞ・・・化け物見たみたいに怯えやがって」
湯を手で掬ったテギョンは、顔を撫でてリンと目を合わせていた。
「アッパが、怖い顔するからだもーん」
「お前が早く戻って来ないからだろ」
どちらともなくお湯を掬って顔目掛けて掛け合っている。
「僕悪くないもん!ジュノヒョンのケーキ出来るまで待ってただけだもん」
「ケー・・・って、お前、まだ食うのかよ」
テギョンの腕がリンを捉えて膝に座らせた。
「食べるの!お豆腐のケーキだから軽いってジュノヒョン言ったもん」
両手を振り上げるリンの腹を背中から抱いていたテギョンが摘んでいる。
「テジ・・・」
「豚さんじゃないもん!僕、頑張ってるもん」
「何を頑張ってるんだよ・・・」
「オンマとダイエットしてるもーん」
バシャバシャお湯を跳ね上げるリンを制しながらテギョンが扉を見た。
「してても食べ過ぎなのは、否めないのですよねー」
タオルを拡げて膝を付いたミニョが、リンを手招いている。
「と、いうことは、やっぱりお預けだな」
「そういうことです」
ミニョに突進したリンは、ワシャワシャ体を拭かれてタオルを巻かれ背中を押された。
「さ、早く着替えましょうね!明日のお休みは、撮影に連れってってあげます」
「わーい」
走り去るリンを見送って立ち上がったミニョは、ふと振り返っている。
「一緒に入るか!?」
ニヤリと笑うテギョンの前で慌ただしく扉が閉められたのだった。
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