台本を抱えたミニョは、重い足取りで、携帯を見るテギョンへ苦笑いを浮かべていた。
「オッパー失敗しちゃいました・・・」
「パーボっ台詞と散ったくらいで失敗な訳ないだろう!練習通りだっ!」
駆け寄ったミニョの肩を抱いて髪を撫でたテギョンの唇が頬を掠めている。
「ちょっ、オッ・・・」
「ふっん・・・消毒」
振り上げた拳を軽くテギョンの胸に押し付けたミニョがトーンを落とした。
「ね、オッパ、あのシーンもっと濃密だったって知ってました!?」
「は!?」
「さっき、コーディオンニが、いつまでもあついねって言ったのですけど・・・確かに・・・」
台本を開いたミニョを見下ろすテギョンの片腕が持ち上がっている。
「照っ」
「おいっコ・ミニョ!?」
「なっ・・・なんですかぁ・・・」
壁ドンされたミニョが、テギョンを見上げた。
「やー外もまだ暑いってのに照明壊れて熱すぎでさ、仕事とはいえシーン変更してくれてて良かったー」
スタジオの開閉音と俳優を取り囲む数人の足音にテギョンが首を傾げている。
「・・・熱・・・って・・・照・・・明・・・・・・が!?」
「はぇ!?何の事です!?オッ!?」
きょとんとするミニョも首を傾げ、脱力したテギョンの頭を肩で受け止めた。
「ったく・・・紛らわしい事言いやがって・・・」
「ぅうん!?オッパ!ちょ、重っ退っいてください」
長い息を吐いたテギョンは、背中をビクつかせて振り返っている。
「ちょっとテギョン!時間と場所弁えて独占してくれる!次の仕事に行くのよ!」
ミニョの小脇の化粧道具をケースに入れるワンが、丸めた雑誌をテギョンに渡した。
「っ・・・そ、は、弁えず・・・じゃないのか!?」
背中を擦るテギョンは、誌面を引っ張り覗きこむミニョの腰に手を廻している。
「弁えてるからここで平然と抱き付いてるんでしょ!そんな取材させて!いつでも俺が見張ってるとでも言いたいのかしら・・・」
誌面から顔をあげたテギョンは、唇を動かした。
「ヌ、ナ・・・性格変わったか!?」
「あんた程変わった人を知らないわ」
カラカラ笑って片づけをするワンを見ていたテギョンは、ふと辺りを気にしている。
「・・・ジョンアは!?」
「今朝からアメリカよ」
「帰国は一週間後って言ってましたよ」
拡げた雑誌を捲ろうとしたミニョが驚いた顔でテギョンを見上げた。
「何で俺に報告がないんだ」
急激なホールド体制で向き合ったミニョは、雑誌に顔を埋めている。
「オッパに言う必要があるのですかぁ!?」
「あるだろっ!お前のマネジメントは俺がやってるんだぞ!」
高く掲げた雑誌で顔を隠し続けるミニョの額をテギョンの指が弾いた。
「っ痛」
「A.N.entertainmentが!やってるのよ!A.N.Jellのマネジメントもね!さっさと着替えて!撮りに遅れるわ!ミニョは・・・・・・こっちね」
キャリーケースを引いてテーラーバッグをテギョンとミニョに押し付けたワンは、さっさと出口に向かっている。
「ミナムオッパの撮影は!?終わったのでしょうか!?」
「ああ、さっき終わったと連絡があった・・・リンを迎えに行って宿舎で待ってるそうだ」
テギョンに促され仲良く引っ付きながらスタジオを後にしたミニョだった。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「すっごーい!合宿所の近くにこんなお店あったの知らなかったー」
カウンター前の丸椅子に立ち上がったリンは、厨房を見下ろして感嘆していた。
「知らなくて良いだろ・・・子供は立ち入り禁止だ」
最後尾で店に入ったミナムは、クローズドの看板を掛けかえようとしてジュノに小突かれている。
「夜しか開店しない不定期営業だからね、それにここは俺の家だよ」
手荷物を下ろしたジュノが、ミナムを呼びこみグラスを用意させた。
「でっーかい家があるんだからそっちに帰れば良いんだよな・・・何でまだここに住んでんだか・・・」
数種の果物をリンに見せたジュノは、ジューサーに放り込んでいる。
「お前、俺にそんな事言えないだろ!家出の度に入り浸りやがって・・・・・・鍵・・・返すか!?」
藪蛇な顔をするミナムは、遠慮もなく酒の名前を告げた。
「こいつが新作作ってる店なんだぜ・・・冷蔵庫開けたら試作品がゴロゴロしてるぞ」
搾りたてのオレンジジュースを一口飲みながら目だけ動かすリンにミナムが指を差している。
「今日は何もないよ・・・けど、次を何にするか考えなくちゃなぁ・・・あっという間にクリスマスだ」
冷蔵庫をリンに見せたジュノは、ミナムの前に乾き物を置きグラスを合わせた。
「ペペロ(11月11日)ムービー(11月14日)ハグ(12月14日)はー!?何かしないのー!?」
「残念ながら相手がいないからね・・・君の家は何かするのかな!?」
「ムービーデイはアッパのビデオ一杯見るよー!アッパとオンマの初デートの日なんだってー」
「へー、初耳・・・」
つまみを口にしながらほくそ笑むミナムを真顔で見上げていたリンだった。
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