最後のキャノン砲が発射され、会場に舞い散る紙吹雪やテープシャボン玉に客席は残照を求めて一層の盛り上がりを見せ、マイクを握っていたテギョンがぐるりとステージ上を見回すと頷いたシヌ、ミナム、ジェルミが、目配せでタイミングを合わせた。
「「「「Meet Again」」」」
重なる声を一際渦を巻いた音響と歓声が、かき消し、バックバンドがエンディング演奏を盛り上げ、テギョンの合図でミニョと子供達がステージへ駆けこんでいる。
「終わったー・・・」
手を挙げハイタッチを交わしてリンを抱き上げたミナムが、ミニョとハグを交わし互いの腰を抱いた。
「このままでいたらヒョン怒るよな」
「何ですか!?」
手を振りミナムと歩き出したミニョは、駆け寄ってきたジェルミに腕を伸ばしている。
「ミナム!一人占めとかずるい!」
「うるせー俺の片割れなんだから好いだろ!それに俺らがくっついてた方が見映えも良くて喜ばれるんだよ」
「アッパが睨んでるよー」
ミナムの腕の中でリンはステージ後方へ手を振った。
「良いんだ!お馴染みだからな!昔もこうやってステージ一周したんだぜ」
「大体ヒョンは、ミニョと最後の挨拶したかったって、後で拗ねるんだけどね」
「テギョンオッパは、皆に挨拶する方が先だって言いますよーメンバーなんて勝手にやらせとけば良いけどこの日だけ来てくれてるスタッフさん達を労う方が先だって」
「酷ー、俺達ついでかよ!メインの俺達こそ一番に労っー痛っ」
笑顔は崩さないものの軽口を繰り返すミナムの脇腹をミニョが抓り、リンが後頭部を叩いている。
「何すっ」
「ほらリン笑って!後少しですよー」
「リンじゃなくて俺っ!」
真横を向いて笑顔が完全に崩れたミナムの頬をリンが引っ張った。
「いひゃいぞリン」
「オッパは、文句ばっかり言い過ぎっ!終わった事をもっと喜ぶべきだと思いますっ」
味を占めた顔で頬を引っ張り続けるリンにミニョを離したミナムが抵抗している。
「喜んでばっかいられないのっ!ネットの速報に俺の21回目の告白とか出てるんだっ!明日からまたヘイの言い訳と解説に付き合わなきゃいけない俺の身になれっ」
「そんなの後で考えれば良いよ!テギョンヒョンの厳しさから解放されるだけで、もー」
ミニョを独り占めに出来たジェルミが、しめしめ顔でその肩を抱こうとして仰け反った。
「お前達は、もう少しA.N.Jellのアルバム売る為の貢献をしろよな」
「・・・シヌヒョンだって・・・嬉しい、癖に」
舌打ちをしたジェルミは、ミニョに肘を差し出したシヌの腕を払おうとして躱されている。
「ま、ぁ、テギョンのイライラ絶好調だったから・・・」
ミニョを真ん中に再び歩き始めた3人は、会場の後方へ向かって大きく手を振り、頭を下げた。
「ぇぁあ・・・すみません・・・」
「ミニョが謝る事じゃないよ・・・妥協できないのは、俺達の方が良く識ってる」
「シヌヒョンも妙な仕掛けしてたよね」
「意趣返しをな!ドラマで忙しかったのに新人のプロデュースなんて俺に押し付けるからだ」
ダンサーとバックバンドのメンバーとステージを去るスタッフ達にも手を振り近づいてくるテギョンを見たシヌとジェルミが目配せしてミニョから腕を離している。
「ミニョの仕事決めたって事!?」
「多分な・・・アルバムの売れ行きも好調らしい」
「忙しくなっちゃうんだねーミーニョー」
意表に抱きつくジェルミを苦笑いで受け止めたミニョは、テギョンに腕を引かれた。
「ったく、お前等、俺の前でよくも堂々と」
「リン、俺の方へ来い」
ミナムからシヌへ抱き替えられたリンは、ターンをするシヌの目線で会場に降る光と音に感嘆を漏らしテギョンの後を着いて来たユソンとジュンシンは、ジェルミに手招かれ傍らに立っている。
「ユソンとジュンシンも良く見ておきな」
アリーナの最前で手を振る客に手を振り返したジュンシンは、頬を染めてジェルミに抱き付いた。
「一番頑張ったのは、お前達だからな」
「そうそう、初めての割に動線もちゃんと覚えてたし」
「演奏も申し分なかった」
「俺達のステージであれだけ出来れば十分!どこでも演れるんじゃないか!?」
A.N.Jellと子供達とステージ最前で並んだ面々は、会場へ挨拶をしている。
「良い経験させてもらえたよな・・・次の仕事に活かせそうだ」
踵を返すテギョンは、ミニョの腕だけを引いてステージ袖に歩き始めた。
「ぁえー、ヒョンってば、もう次とか考えてるのー!?ミニョのマネジメントに専念するんじゃないのー!?」
「ぁあ!?俺を誰だと思ってやがる!コ・ミニョなんて片手間で十分なんだよっ!メインは、あくまでA.N.Jellっ!休み過ぎで自覚が足りないならお前にも毎月リリースさせるぞっ」
呟きを追いかけたジェルミが足を止めている。
「あーんなこと言ってるけどミニョ中心に仕事回してるっていつ気付くんだろ・・・」
「一生気付かないんじゃないか・・・恋は盲目っていうし」
「愛が余り過ぎて自分の子にも嫉妬してるしな」
シヌとミナムがジェルミの背中を叩き、並んで歩き始めた3人は、顔を見合わせた。
「「「それでも俺は完璧」」」
真ん中のジェルミに指を向けたシヌが苦笑を漏らし、同じ動作をしたミナムも豪快に笑っている。
「って、思ってるよなー」
笑い続けるミナムが、伸びて来たリンの腕に首を傾げて頭を近づけた。
「痛っ」
「アッパは、完璧だもんっ!僕のアッパなんだから当たり前なんだもんっ」
暗転したステージにミナムの憎まれ口が響き、リンの猛攻にシヌとジェルミもペシッと頭を叩かれていたコンサートの幕切れであった。
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