子供達を預かってくれるシスターに礼を述べた後、教会をぐるりと囲む林の中を神父様と歩いていた。
『昔の診断書を何に使うのかはお聞きしませんでしたが、貴女がここにいるということは・・・』
『ええ、助けていただいた命でもう一度選択をしました。テジュンが助かればそれだけ良いとそう思っていましたが、私もこうして生きて・・・新しい命も貰った。唯、ただ、テジュンの時を思うと不安はありました。もしかしたら・・・と・・・』
神父様が指を差す先の小さな木の前で膝を折り、祈りを捧げた。
林の中の白樺は、小さな墓標。
人の一生分くらいしか生きないこの木にもうひとつの命を託したのは、私がここで助けられたからだった。
『テギョンssiの申し出を受け入れたのもこの子が私を生かしてくれたからです・・・この子が生きていたらテジュンをここに置いて行くこともなかった・・・』
『それについては、勝手な言い分ですが、あの子は、ここに残って良かったのだと思いますよ。意味も知らず、この木に水遣りにやって来ますが、父親にそれを告げてはいけない事は知っている様です。優しい子に育っています』
遠くから私を呼ぶ声が聞こえていた。
小さな木霊と共に響いてくる声に手を振って答えると神父様に戻りましょうと言われた。
『産めば命は無いと余命宣告をしたのは、私ですからね・・・まさかあの子があそこまで大きくなるとは思いませんでしたし、貴女がまた同じような子等を授かるとも思いませんでした』
『ええ、だから、今は、多少なりとも許されたと思っています。あの子と新しい命達とここで暮らせるのも、この子に祈りをあげられるのも・・・』
数百メートル先で手を振るシヌに纏わりついているテジュンと双子の横たわる籠を少し無造作に持ち上げているテギョンssiとあそこが私の居場所。
『悪女も聖女も元を正せばどちらも唯純粋なだけの女性です』
背中に聞こえた神父様の声にまた来ますと返し、テギョンssiとシヌの間で両の腕を取った。
『何の話をしていたんだ!?』
『林の向こうは公園だろう!?テギョンが画家と出会ったっていう・・・』
『ええ、お散歩するにはとても良い場所なんですよ!今度シヌも案内しますね』
俺は、と言いたそうな横目は無視することにして代わりに組んだ腕に力を込めた。
テジュンも本当は、双子だった。
けれど、これは、決して話してはならない。
亡くした命は戻っては来ない。
シヌもテギョンssiもテジュンを愛してくれる。
私を愛してくれる。
双子の命も。
一緒に暮らせる。
私の手の中に全てがある。
だから、これで本望。
これが、悪女の選んだ本望なのだ。
_______________Fin_______________
にほんブログ村