全てが欲しい、と、そう思った。
全部。
それが意味するのは。
それを手に入れる為には。
お腹の子供が双子だと知った時、何故かふたりの子供だと、ふたつの運命だとそう思ったのは、言い知れぬ不思議な感覚で、ここで、このお腹で育っている者達とテジュンを守る為なら何でも出来ると苦しめるであろうふたりの今後を考えるのは、止めた。
大きな人達、自分で考え、自分で行動し、自分で運命を切り開いて行ける。
開いた運命の先にまだ私もいて、いいえ、例えいなくてもそれが私の望み。
望みを叶える為には、祈りだけではどうにもならない。
だから、だから、悪女は、鬼女になりました。
羽化を繰り返し、飛べるだけの羽を手に入れ、いつかの聖堂の前で、待っているとどんなに時が経とうと今お前の前にいるのは俺だけでその心を悪女と呼んで壊したのも俺なら守りたい守らせてくれと泣き笑いで訴えたシヌと、誘惑を、鑑定書という動かせない事実を持って現れたテギョンssiの誘惑とテジュンの存在を知られ選択を迫られたあの時にふたりが下した決断とそのどれもこれもが手放さざる負えなかった彼へのどんな形でもその傍に戻れるという贖(あがな)いだった。
ならばもう一度。
ならば、もう一度だけ。
神様、私のしている事は罪ですか。
けれど神様、罪だと知っても止まれなかったのです。
『ね、オンマ、約束守ってくれてありがとう』
隣で揺り篭を覗いていたテジュンに声を掛けられ、小さな掌が私の手を包むのを見た。
『一人じゃないのもすっごく嬉しいよ!』
無邪気な顔で、双子の頬に指先で触れ、擽ったそうに歪められた顔に笑みを深くしていた。
『きょうだいが欲しいと言ってたものね』
『うん!でも、アッパは、出来ても一緒には暮らせないぞって言ってたからシヌアッパもオンマもここで暮らしてくれてとっても嬉しいよ』
『テ・・・・・・ジュン・・・!?』
『僕ね、知ってる・・・アッパは僕の本当のアッパだよね!?アッパは隠してるつもりだけど、前にアッパの小さい頃のアルバム見つけちゃって僕とそっくりな写真があって、それ持って神父様に聞きに行ったんだ!そうしたらそれは今考えるべき事では無いって言われた。どうしてって聞いたら孤児院に連れて行かれてそこで大人の人達を見た・・・』
テジュンの話を聞きながら締め付けられる胸に痛みを感じながら微笑んでいられる自分に感謝した。
そして神父様の言葉にも。
『ここに置いていった子を迎えに来たんだって。だけどその子はもう神様と暮らしてるから別な子を連れて行くんだけど・・・神父様がね、あれを見てどう思うって言うから、家族だよって言ったら、じゃぁシヌアッパやオンマをどう思うって聞かれて、僕やっぱり家族って答えたの。そうしたら、シヌアッパは、間違いなく僕と血の繋がりはないだろって言われて・・・』
一生懸命に話すその小さな頭で揺れる髪を見つめながらテジュンと再会した時のことを思い返していた。
テギョンssiは、父親だとは明かさないと、ただ、母だとテジュンを産んだ母であることだけは、理解が出来なくても告げると言い、私がシヌと暮らしている事もシヌをアッパと呼ばせることもそのどちらをもこの小さな頭が認知できるように話をし愛情を注いでくれていた。
『やはり母になる選択をされたんですね』
抱き締めたテジュンの声に振り向かされ、微笑む神父様の姿に深く頷いていた。
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