「次・・・でラストになりますが、数年ぶりに大きなコンサートをさせて頂いて、原点回帰というか懐かしい顔と同じステージに立つ緊張というか・・・」
足元のペットボトルに腕を伸ばしながら話し出したテギョンは、ステージ袖のミニョとリンを見ていた。
「俺個人は、コ・ミニョとの共演という・・・昔は当たり前に出来ていた事をまたさせて貰えたり新たな挑戦もあったり・・・・・・い、や、ダ・カーポ(初めから)はソンベもいるし無理だな・・・」
静まり返る中、最前列のファンの一声に真顔で応えて手を振ったテギョンに会場が失笑に包まれている。
「俺達がこうしてステージに立てるのはやっぱり皆がいてくれるから!これからもA.N.Jellとこのステージに立った全てのメンバーを応援して下さい!今日は本当にありがと!」
マイクを戻しながら振り上げた手を下ろすテギョンに合わせてジェルミのドラムが打ち鳴らされた。
「『さよならをありがとう!!!!』」
テギョンの曲目コールに会場が大歓喜に包まれている。
★★★★★☆☆☆★★★★★
「ね、オンマ、アッパこっち見てたよ」
「ええ、多分今泣きそうなのだと思いますよ」
「え!?アッパが泣くの!?」
見開いた目でミニョを見上げたリンが何度も瞬きを繰り返した。
「だって・・・・・・この曲書いたのリンでしょう!?」
「え!?」
クスリと笑い乍ら膝を曲げたミニョがリンの顔を覗き込みウィンクしている。
「あぁ、でも9割はアレンジしたってオッパ仰ってましたけどね・・・」
ステージへ目を戻したミニョは、リンに腕を引っ張られた。
「アッパの新曲じゃないの!?」
「詩はアッパですけど・・・曲は、リンでしょう!?クレジットにも入ってましたよ」
「え!?え!?え!?」
腕を引き返してリンを前に立たせたミニョは、お腹越しに見上げられ微笑んでいる。
「知らなかったのですか!?」
「知っ知らなーい!!!!」
くるんとミニョの前でひっくり返るリンは、慌てた顔で大袈裟に首を振った。
「イニシャルだけですけどね・・・ほら、共作になっ・・・」
「えっえええええええええええええええー!!!!!!!!!!!」
傍らのテーブルに腕を伸ばすミニョの間近で会場の音響よりもサイレン並みにけたたましいリンの叫びが響いたのだった。
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