「良いか!!!!お前には、呉れ呉れも言うべきことがある!!!!!」
腰を折り青筋立てリンに人差し指を突きたてるテギョンにメイクを直すスタッフが、顔を引き攣らせて仕事を続ける中、ギターを肩に掛けたシヌは、靴を直して声を張り上げた。
「ラスト3曲だ!アンコール入れて5曲!ラストは、ミニョと子供達もステージに出してくれ!」
「!!!?おっ!!」
「ジェルミ!ミナム!テギョンも!!!出るぞ!」
暗転したステージでユンギのギターが溶暗(フェードアウト)し、シヌのギターが照明の転換と共に転調してA.N.Jellがステージに飛び出している。
「・・・怒られましたね・・・」
近づいて来たミニョを振り返ったリンは、指で両の眦を釣り上げた。
「怒・・・られるかな・・・」
「三人で踊りたいって言ったのリンですよ!?練習も沢山・・・したでしょう!?」
首を傾げて笑ったリンは、ミニョの腰に飛び付いている。
「シヌヒョンがねー、どんな事してもアッパは、助けてくれるって言ったの!どんな無茶をしてもアッパはプロだからヒーローみたいに空は・・・きっと飛んでくれないけど泥にはまみれてくれる・・・って・・・」
柳眉倒豎(りゅうびとうじゅ=柳の様に美しい眉をした女性の怒りを表わす故事)を崩したミニョも小首を傾げた。
「良く解んなかったけど僕の為のステージなんだから楽しめば良いよってハラボジも言ったー」
お腹で首を振るリンを擽ったそうに笑ったミニョが腰を落としている。
「楽しかったですか!?」
リンの頬を滑った手が顔を上向かせた。
「楽しい!とーっても気持ち良いもーん!オンマとーアッパとーシヌヒョンとジェルミとミナムとーハラボジとー、あとー、あと・・・」
指折り出演者やスタッフの名前を連ねるリンの両手をミニョが握っている。
「アッパもね、楽しいって仰ってましたよ・・・リンがちゃんと出来るか心配もしてたみたいですけど上出来だって」
見合わせた顔を暫く眺めたリンがミニョの首に抱き付いた。
「オンマは!?心配しないの!?」
「へっ!?」
「だって、アッパは、僕に心配だ心配だミニョと同類だしなー、ってずーーーーっと言ってたよー」
耳から唇を放したリンは、ミニョに向かってニンマリ片頬を釣り上げている。
「昔、オンマと一緒に仕事してた時みたいに胃が痛いんだけど、終わればスッキリするんだってー、そうしたらオンマにご馳走作って貰うんだってー」
「はぇ!?」
「ほー、それは、それは、是非私もご相伴したいね」
眉間を寄せるミニョの横にギョンセが立ち、リンが抱きつく相手を変えた。
「ハラボジー」
「テギョンは過保護すぎるよね・・・自分はひとりで大きくなった様な顔をして・・・」
「アボニ・・・ム」
「さぁ、本当にこれでラストだよ!夢の時間が終わる」
リンを抱き上げたギョンセの背後にヒジュンとユジンが立っている。
「アボジ、バイオリン」
短い返事でユジンからケースを受け取ったギョンセがリンを下ろした。
「さて、調整したけど久しぶり過ぎてやっぱり振りだけで勘弁してほしいな」
「駄目よ!約束したでしょ!ちゃんと弾いて!こんな機会二度とないんだから!」
ギョンセを睨むユジンは、ミニョの呆けた顔を横目にクスリと笑いヒジュンと腕を組んでいる。
「おじ様!早く出ましょ!」
再び暗転したステージでアンコール前ラスト一曲、テギョンのMCが会場に響いていた。
にほんブログ村