奇跡じゃない。奇跡なんて、そんな生易しいものじゃない。考えて考えて、あの頃あの頃繰り返した情交の些細なほんの些細な縋る様な可能性は、どこで聞いたのかも忘れる様なきっと肌を撫でもせぬ程の風の噂で、けれどそれこそが私に、私達に必要なものだった。
『奇跡なんて・・・この状況が奇跡・・・で、しょう・・・』
頬を撫でるシヌの手にその掌から伝わってくるぬくもりに肯定をされていた。何度、何度聞かされたか判らない。オッパをテギョンを裏切っていると。それでもそれでもこの手を離せないのだと。落ちて来たのはお前だと。悪い女だねと。何度。何度この手にそう言われて救われて来たか判らない。
『・・・悪、い女・・・だったな』
溜息交じりの言い回しが背中で聞こえた。
『悪い女にしたんだけどね』
★★★★★☆☆☆★★★★★
そう、悪い女にしたんだ。
俺が。
付け込んで引き摺り落し僅かな罅(ひび)割れのその隙間で囁いた。
悪い男か。
いいや、悪いとは思わない。
落ちたのはお前。
蛹は、蝶になる為に変態し、いつまでも地を這い蹲ってはいないから。
唯、ただ、その羽化しきれぬ翅(はね)が闇を纏って、俺の腕に落ちて来ただけ。
★★★★★☆☆☆★★★★★
そうだ。
俺だ、俺が変えた。
俺の曖昧さが、蛹を殻へと追い込んで。
守るべき殻の変態に気付いていたのに。
その罅割れを見つめていたのに。
作り出されたその身の危さに尚、縁(よ)った。
今も続いている。
『納得出来るような答えを寄越せ』
この状況を奇跡と言うならば
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