何度目か判らない愉悦の先で零れる涙にその透明度と瞳の輝きに俺とシヌを映したミニョは、諦めたような深い深い溜息を吐いていた。
『オッパですか!?シヌオッパですか!?』
か細く、吐息交じりな問いかけはけれどはっきりと、シヌの答えに頬を膨らませ、ズルズルとその身をシーツに横たえていた。
『もっ!良いですっ!』
『良いとは!?』
俺の問いかけに仰向けの頭の上に腕が伸びて首を引き寄せられた。
『もっぅどこで何を聞いたのか知りませんが・・・・・・にっ娠し・・す・・・・・・』
ふたり、と腹を摩ったミニョの閉じられた瞼からシヌに視線を移せば頷いていた。
『じゃぁ、俺達が聞きたいことも解ってる!?』
ミニョを組み敷いた格好のシヌがその腹の上に頭を乗せ、スッと短い息を呑んだミニョは、俺を上目に睨んでから肩を落とした。
『っん・・・多っ分・・・宣告・・・の・・・こと・・・』
消え入りそうなその言葉は、俺に向けられ、そして、瞳が語っていた。
『余命宣告だぞ。受け入れられる訳がないだろう・・・』
『産めば良いよ、と率直には言ってあげられないよ、ね』
俺の言葉に被るシヌの固い声にミニョの身体が一瞬だけ跳ね、けれど、腰に腕を回したシヌの下から抜け出すことはせず、俺に向けた瞳が不満たっぷりに輝いた。
『双子なんだろう!?それも俺達ふたり』
『双子ですよ。でも私の子供です』
『お前と、俺達の、だ!間違えるな』
真っ直ぐその視線を捉えれば俺を見つめ返す瞳が強い光を放ち、言うなれば、まるで今更とでも言われているようなそんな瞳が逸れた。
『オッパにはテジュンがいます』
『ぁあ・・・ん』
『テジュンは、私が捨てました。拾ってくれたオッパにはとてもとてもとても感謝しています。今私がテジュンに会えるのもオンマと呼んで貰えるのも全部全部みんなオッパとシヌオッパのお蔭です。だ、から・・・』
だから今度の子供はシヌに渡して育てさせ、それでお前は消えるとそう言うのか。そんなの許せる訳が無い。俺が手に入れたかったのは、あくまでお前で、テジュン等はっきり言ってしまえば手段のひとつに過ぎなかった。あの小さな手が俺に伸ばされあの顔が笑いかけて来た時のあの、臓腑に感じたえもいわれぬ重みを取り払った歓喜。それと同時に与えられた屈辱は、けれど、お前を見て消えた。
★★★★★☆☆☆★★★★★
『だから、俺に子供を残して今度は、ちゃんと消えようとそう思ってる』
息を呑むその仕種が、瞬時に腹を通して伝わって来ていた。
呑まれた息のその大きさが、勢いが、何を言わんとするかを伝え、それは、真逆だよねと俺の心を震わせた。
その感覚を初めて覚えたあれが何度目の睦事だったか忘れたけれど、我慢して我慢して平静を装ってテギョンを見つめ、痛くない筈が無い胸を抑えて大丈夫ですなんて何度聞いたか判らない言葉と涙をその瞼を塞ぐ様に口付ければ、大きな目を見開いて俺に縋って声を殺して泣いて、あの時と同じように俺を掴む腕が、助けを求めているのを俺は知っているけれど今は、無視することにした。
『産めない訳じゃないんだろう・・・ただ、両方助かる可能性が低いだけだ』
『滅多にある事じゃないからな・・・遺伝子違いの双子なんて、奇跡としか言いようがない』
奇跡、果てしてそうだろうかとテギョンの声を聞きながらミニョの腕を引けば、ミニョもまた奇跡じゃないですと俺の耳に囁いた。
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