『ぁ・・・だ・・・』
『いつも言ってる・・・ダメも嫌も聞かないって・・・』
『そ・・・ぁ・・・』
呑み込まれた言葉に零れていく雫に溶け合って混ざり合っていくものがどちらの物かなど判らなくなって思考も呑まれていた。
押し付けられる壁は、掴むものなどどこにも無くて、近づいてくる顔と体に押し潰されながら、肌を掠めていく風を感じた。
『あ・・・』
思う間も無く裏に返された背中から回って来た腕に掴まれた胸が、激しく鳴って。
『・・・向こうは・・・どうだった!?』
意地悪な質問もいつもの事で、帰国をして真っ先に聞かれ言わされる事。
あの時と違うのは、背中に何かを見つけて、歯を立てられること。
あの人も同じことをする。
そこに何があるのだろうといつも思うのだけれど、それは、ふたりにしか判らない事らしく、鏡を見ても確認できた事は無かった。
剥ぎ取られていく一枚一枚に離れることの無い掌に熱と心地良さを交互に与えられた。
『ぁ・・・ふぁは』
『あいつは・・・・・・・・・元気だった!?』
知ってる癖に意地悪を続けるシヌに少しだけ腹が立つ。
毎日、毎晩、メールを交換しているのを知っている。
互いに無関心を決め込んで、プライベートでそんなに仲が良かった事なんて無い筈なのに、いつの間にかは、やはり関係が変わった頃からだろうか。
『何を・・・・・・考えてる!?』
『え!?・・・あ・・・』
口調は優しい癖にこの人に躊躇は無い。
返された身体を、頭を、下げる間も無く、視界に飛び込んできた薄ら笑いに腰が引けていた。
『あ・・・だ・・・』
柔らかい髪の間を指がすり抜ける。
本気で押さえている訳じゃないのだから当然だけど、見えてしまったそれに唇をなぞるそれに増々腰が引けた。
『ダメって言ってるだろう・・・』
這い回る赤い舌にどこまでも暴かれてしまいそうで、どこまでも暴かれたのは、つい先日のことなのに暴き方が違ってもどちらも熱い事だけは変わらなくて。
熱い。
熱く。
そして。
★★★★★☆☆☆★★★★★
空港からここまで繋いだ手の感触にまた緊張しているのだと思っていた。
いつまでたっても変わらない。
何をされるか解っているからなのか、それともあちらを思い出しているからなのか。
聞こうとすることは同じだ。
やることも。
やり方は、どうだろう。
そんな考えを嘲笑いながら、同じだろうなと思って部屋へ向かっていた。
『まっ・・・』
二週間ぶりの接吻は、甘い。
二週間。
長かった。
お前にとっては、どうだろう。
逃げ惑う隙を与えず、これは、まだ入り口に過ぎず。
暴かれるのが楽しいのか。
暴くのが楽しいのか。
いつの間にか、この悦びが、俺とあいつの間で共有されている。
『ぁ・・』
散々貪られた唇を噛み締めて、でも、俺は知っていて。
その身体が、その胸が、何を求めているのかを。
やっぱり、暴かれる方が楽しいのかな。
悪い女だな。
いつまでたっても。
悪い男に捕まったものだ。
純粋な癖にお前は、魔女で、なら、俺達は、悪魔か。
『あ・・・ヨ、ボ・・・』
二週間ぶりに聞く声は、その声は、俺を滾らせる。
いいや、ずっと滾っていた。
嫉妬という炎は、まだ俺の中にも燻っている。
今頃あいつは。
今、あいつは。
離れ離れの間、そんな事ばかりを思っている。
しかし、これが心地良いのも事実だ。
帰ってきたお前を暴く。
この心地。
くれたあいつに感謝もするさ。
だから、お前が今何を隠していても、俺は、この時間を無駄にはしない。
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