Fグループといえば、その実態を知らなくともブランド名を聞けば子供でも頷ける様な、衣食住のどれにでも何かしらの領域が存在するトップ企業だ。
その影響力は、国内だけに留まらず海外への進出は、自分達が生まれる遥か以前から行われていて、テギョンを尊敬している理由の一つがその宣伝の為の音楽事業を一手にプロデュースしている事であり、何よりもA.N.Entertainmentの売り上げの多くは、国内トップグループであるA.N.Jellのそれを遥かに凌ぎ、事務所内の専らの噂では、テギョン個人の資産は、それによって築かれているらしいとミニョに聞かせたのは他でも無いミナムだった。
そんな企業がCMの仕事をくれるらしいと喜々として出掛けて行ったミナムを然して興味も無くミニョは見送った。
しかしまさかそれが自分に関わる事だとは、驚きを通り越した頭は、全く回らず、テギョンの話など宇宙の果ての出来事の様で、星というものは、やっぱり不思議なものだと上の空でその顔だけを見ていたというのが本当だ。
『・・・っい、コ・ミニョ!聞いているのか!?』
むにょにょんと頬を引っ張られたミニョが頭をあげた。
いつの間にか起きあがって座り込んでいたテギョンの胸に凭れていたミニョは、額に乗ったテギョンの顔を上目で眺めてから、コッックリと頷いた。
『あのな、お前の契約なんだぞ。やることは、モデルだから黙って立っていられればそれで良い。PVの撮影や雑誌の撮影の経験をしているんだから問題なく出来る!』
自信たっぷりのテギョンの言い分は、ミニョへの買い被った評価に違いないけれど当の本人は、足元に転がる契約書を見て目を泳がせた。
『・・・あっれは・・・コ・ミナムっだかっら・・・出来たので・・・そっれって・・・コ・ミニョでっって事・・・ですよ・・・ね・・・』
『・・・お前は、コ・ミニョだろうがっそれとも何だ今度はミナムと入れ替わっているのか!?』
『えわっ、ちっヒョっ』
ミニョを抱きしめるテギョンの腕が胸を押し上げた。
それと同時にそこをすっぽり覆う手に慌てたミニョは、ジタバタ暴れようとしたけれど羽交い絞めの腕を強められ、やがて諦めたように大人しくなっていた。
『ふんっ、俺に逆らおうなんて1億光年早い!最高級の望遠鏡でも用意してからにしろ!』
『っ、望遠鏡はヒョンが買ったやつがあるじゃないですかぁ』
『あれは、お前と月を見ようと思って買ったんだ。見る前に居なくなりやがって!星は、もっと遠くで輝いているんだぞ、俺に見えるのは月だけだと教えただろう』
『星を見るって言ってましたよ・・・』
呆れ口調のミニョを眉間に深い皺を寄せたテギョンが引き倒していたのだった。