ごちそう様と手を合わせたミニョが何気なくあげた視線の先のテギョンは、酒肴のチーズを指で摘んで口に入れ、ワインで流し込んでいた。
何という事は無い、その仕種が、物憂げでかく儚くありそうに見えるのは、閉じられた瞼の淵で揺れる睫毛がいつもより薄暗い明かりに照らされているせいだ。
『何か言いたいことがあるのか・・・それとも・・・聞きたいことか・・・』
零れた低音にテギョンから顔を逸らしたミニョが、首を振った。
『お前に見つめられると困る・・・』
『ヒョ・・・』
『お前に見つめられると不快だ・・・』
何の抑揚も無い言葉の読めない感情をただ、続く言葉もまた否定だと決めつけたミニョが立ち上がるとテギョンの手がミニョのそれを包み込んで、引き寄せていた。
『お前の言動はイチイチ俺を苛立たせ、イチイチ俺の目を離せなくさせる・・・』
向きを変え、膝の間に立たせて見上げたテギョンの右手が背中に回った。
『お前がいないと息が出来ない・・・お前がいないと・・・』
『ヒョンニム・・・酔っぱらっているのですか!?』
ミニョのお腹に額をくっつけたテギョンをきょとんと見下ろした頭がガクンと下がっていた。
『わっわわ・・・』
『ったく・・・ムードの無い奴だな・・・尤も期待した訳でも無かったか・・・』
独りごちるテギョンにふくれっ面のミニョが、腕を廻した。
『ムードって、ヒョンの意地悪じゃないですか・・・不快だ・・・って・・・』
『不快だろう・・・特にこう胸の辺りが・・・モヤモヤして・・・・・・・・・触りたくなるんだ』
『はぇ!?』
『触りたくなるんだよ・・・お前に・・・このまま押し倒してしまいたくなるんだ・・・』
『ふぇ・・・ぁ』
ミニョの言葉を呑み込んでキスを繰り返していたテギョンだった。