どの辺り。
どこまで行きたい。
そう聞かれたミニョは、ヒョンと一緒ならどこへでもと笑い、欲が無いのか、それともそれが欲なのか、運転席で思い出し笑いをしていたテギョンは、何度か呼ばれて戸惑った返事をしていた。
『あそこです!十字架が見えます!あそこに行きたいです!』
教会の尖塔を指差すミニョは、近くなっていく景色に感嘆の声をあげた。
『町の教会です。ああいう所にこそ信仰があるのだと院長様が仰ってました!観光地の教会も素晴
らしいけどああいう場所はもっと素敵だそうです!』
感激と興奮と入り混じった表情で振り返ったミニョは、しかし、テギョンの顔を見るなりシュンとした。
『・・・すっ、みません・・・ヒョンは・・・嫌ですよね・・・』
窺い見るテギョンの白けた表情に声も萎んでいた。
そんなミニョを横目にするテギョンは、見えない頬を上げた。
『何も言ってない。そうやってすぐ謝るのは止めろ。お前が行きたいなら俺も行きたい。お前が見るもの感じるものを俺も一緒に感じたい』
『ヒョ・・・』
伸ばされた腕で頬を撫でられたミニョは、恥ずかしそうに俯き、しかしテギョンの舌打ちに目を泳がせた。
『ったく、観光地じゃない分、駐車場が無いんだよな・・・どこかに車を停めないと・・・』
テギョンの意図に破顔したミニョも辺りを見回した。
家々が立ち並ぶ一角のどこも石畳で仕切られた先は、低い生け垣に遮られた広い庭が見えるが、道路に駐車場らしきものは見当たらない。
『どこかのお家でお願いしてみますか・・・』
ミニョの提案に頷いたテギョンは、生け垣の向こうに見えた住人に声を掛けていたのだった。