カードに書かれている招待と思しき詩を読み上げたミナムは、それをソヨンに返しながら聞いた。
『誰(た)そ彼(=黄昏=18時頃=人の顔の判別が付き難い間帯に誰ですかと聞いた処から)のルージュを引いてってすっげぇ意味深だよなコレ!!そいつが寄越したんだろう!?』
返されたカードの文面を続けて読んだソヨンが、シヌを見た。
『あいつにはね、女を口説くのに意味なんかないの。ただ、試したいだけ』
ニヤリと笑って振り向けた顔を近づけるソヨンに驚いたミナムもまた頬を釣り上げてニンマリした。
『ヌーナー、それ言っちゃダーメーなー』
『ミナマー!』
噴水の前で子供を下ろしたジェルミがミナムを呼び、ソヨンの両肩を押して駆け出したミナムは、振り返り様のシヌの肩を叩いて通り過ぎた。
『価値を求める人もいるでしょう』
シヌの挑戦的な瞳を横目にしたソヨンは、ジェルミ達の方へ手を振った。
『叶わない恋だから状況を楽しめるだけの気概(挫けぬ心)を持てるか自分を確かめているのよ。胸の痛みは、いずれ消えると教えてあげたから自分を嘲る恋だって恋の内だと楽しんでいるの』
『なら、俺は、いっそ子供に戻りたいです』
軽い足取りで近づいて来たソヨンに頬を撫でられたシヌは、正面を見つめたまま、周る体を横目で追いかけた。
『子供ならもっと早く忘れられるかもね』
『憧れと区別がつかない内が華ですよ』
肩に残した手で背中に回りシヌの首を引いたソヨンが、声を潜めた。
『苦しい恋ならしない方が良いと思ってもそれに陥っている自分には気付かないものよ。苦しいのは、それこそ見て見ぬ振りをして自分を抑え込んでいるからだし、このカードみたいに明白(あからさま≒かりそめ=その場限り)ならこっちも対処の仕様もあるけど・・・浸け込むのは、ルール違反よ』
『ミニョが貴女みたいに機転が利く女なら俺ももっと早くそうしていたかも・・・』
振り翳されたカードを見つめ、鼻で笑ったシヌは、ソヨンの手首を捻り返した。
『ミニョが宿舎を出て行きたいと言っているのは、貴方が原因だものね』
返された腕でターンを決めたソヨンは、得意げにシヌを見つめ、ゆったり歩き出した。
『・・・知っ、ていたんですか・・・』
気まずい素振りを見せたシヌは、後を追いながら真顔を取り戻して、薄く笑った。
『出て行って欲しいの!?』
『さぁ・・・でも、見ているのが辛いのは確かです・・・考えたくない事も考えてしまう・・・いっそ遠くに行ってくれたらと思ってもそれはそれで気になるんでしょうね』
『まぁ、今は、悩むところね・・・あの娘と貴方達の時間を私は知らないけど、あの娘の話の貴方は、とても素敵な兄だもの』
『・・・ミナムを見習えば良いですかね』
『あれは見習えないわ。本物だもの。ジェルミを見習うべきね』
『努力します・・・』
『マーム!』
子供に呼ばれたソヨンから離された手を見つめ、今頃テギョンとミニョはどのあたりかと考えているシヌだった。