ソヨンを母と呼んだ少年は、利発な態度でシヌやミナムに挨拶をしたが、ジェルミには、ポカンとその顔を見上げた後、きらきらさせた瞳ですっかり懐いて今は、その肩に乗っていた。
『あいつ、動物と子供受けは抜群だな・・・』
感心顔のミナムが、ソヨンとシヌと並び歩きながら呟いていた。
『あっはは、まぁ、そうとも言うでしょうけど・・・珍しいのよ・・・』
『何がです!?』
『ああやって髪を染めてる人は、国には全くと言っていいほどいないのよね。あるものを変える事を禁じられてるし・・・』
斑な髪色のジェルミを見つめるソヨンの曖昧な言葉に首を傾げたミナムが聞いた。
『あるものって・・・生まれたままって事か!?』
『ええ、そう。病気になってもそれを受け入れるのが徳だと思っているようなそんな人達の集まりなのよ・・・進歩を嫌っているというのかしらね・・・』
『・・・俺の知ってるヒョンは、そんな奴じゃなかった気がするけど!?』
『ええ、あの人は、そういう人ではないわ・・・でも、誰よりも戒律を守ってる人でもあるわ』
『それで、逃げ出したのか!?』
揶揄い口調のミナムをソヨンが睨みつけた。
『っ人聞きが悪い事を言わないでくれる・・・話し合って離婚したんだから!』
『何で、あの子を置いて来たんです!?貴女の財力なら子供ぐらい育てられるでしょう!?』
純粋な興味を零したシヌもまた睨みつけられたが、軽い溜息を吐いたソヨンは、子供とジェルミの背中を見つめて話し始めた。
『あの場所の生き方があの子にとって必要だから置いて来たのよ。私の夫は、どちらかというと新しいものを取り入れたい改革派でね、私と出会う前は、長老と呼ばれる年寄り達と対立が激しかったらしいわ。そりゃそうよね、成人にも満たない子供が、国の改革に意見をすれば、まして継承権第一位に居る者では、未来への不安も相まって軋轢も生まれるわ。子供の目線っていうのは、何でも正しくも間違っても見えるし、大人ってのは、見て見ぬ振りもしながら状況判断で周りに合わせるんだもの。最も留学前に女のひとりも作らなかった事が大きな原因らしいけど・・・』
シヌとミナムが顔を見合わせた。
『国を大きく変えられる人材を捜していたらしいのよ。けれど、それは、闇雲に外の物を取り入れれば良いというものではなくて、今に始まった事でも無いわ。長老達だって、それをして来なかった訳じゃない。唯、やり方と時期が合わなくて、だから、彼は、長になるべく選ばれていたけれど・・・』
『結婚前に子供作っちゃっまずかったんだろう!?』
ミナムがソヨンの前に飛び出して指を立てた。
『そう。私達の国でも未婚で妊娠する女性に厳しいけど、男性に、より厳しいのよ・・・』
『それで、継承権剥奪な上に軟禁状態ですか・・・』
ミナムの頭を押しやって歩き続けるソヨンは、シヌの憂い顔に頷いた。
『でも、だからこそ、私が、自由なの。自由にどこへでも行けるの。その代り、私もそれなりの代償を払わされているけど・・・それにあの子は、私に会いたければ、いつでも飛んで来れるからね。彼の息子でもそこは、きっちりひとりの人間として扱われてるから・・・』
『ふふーん・・・』
『けど・・・あの子に教えてる人間が優秀だけど我儘でね・・・頭痛の種よ・・・』
『それって、さっき受け取ってたカードか!?』
ソヨンが右手に持っていたカードを振り翳し、それを奪ったミナムは、シヌと覗き込んでいたのだった。