『なんだよ・・・』
腹の上でクスクス笑うミニョに少しだけむっとしながらテギョンは起き上っていた。
笑っているミニョは、上半身を起こしたテギョンに未だくっつきながらその顔を見上げた。
『なんだ!?何が可笑しい!?』
『ふふ、ヒョンのお腹がクゥクゥ鳴っているのですっ!ふふ、ほらっまた鳴ったっ』
活発な内臓の動きが可笑しいと笑うミニョは、そのままテギョンの脚を枕にして目を閉じた。
『チッ・・・そんな事か・・・健康だったら胃も動く・・・お前だって鳴ってるだろう・・・』
伸ばそうとした手を躊躇いがちに引っ込め後ろに置き直したテギョンは、景色を見つめた。
向こう岸までの距離は、霞が掛かって見えるから数キロはあるだろう。
豆粒の様に幹線道路を走っていく車を追い、観光用のボートが浮かぶ湖を見ていた。
『アフリカもこんな感じか!?』
遠くまで見渡せるその情景は似ているかとテギョンは聞いた。
『静かではありましたよ・・・物資が手に入らなかったりは、本当にありましたけど・・・考えてたほど
でもなかった・・・かな・・・でも、それも私の行った場所がそうであるだけだってオンニ達が言ってましたけど・・・』
『過酷な状況もあるだろうからな・・・』
だから、心配が尽きなかったのだ。
人がいて、通信手段もあって、定期報告もあったが、連絡が無かった間の不安感は、まだ拭いきれていない。
『どこからか逃げ出してきたって人達に会ったんですけど、一時の感情とひとりの時だけは、助けては、いけないと言われて、声を掛けても駄目なのだそうで・・・』
ミニョの話を聞きながら、テギョンは、また考え事を始めていた。
母の、モ・ファランの恋は、若すぎて、デビューして間もなくだった事も原因だと老人が、言った。
もし、デビューを受け入れるならば、その二の舞は、決してさせるなとテギョンに釘を刺した。
それを守るのは、他でも無いテギョンであって、ミニョは、何も知らない。
ただ、それを守れるならば、後援者として、老人程有力な者はいないのだ。
もし、ミニョを抱いて、その先の今はまだ、想像でしかありえない事と今夜の計画を考えながらテギョンは、自分を嘲笑いまた倒れ込んでいたのだった。
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