駆け抜けた白い影にチキンを咥え様としたミナムは、あんぐり口をあけたまま横に並ぶジェルミと庭を眺めていた。
『なぁ・・・・・・今のヒョンだった・・・よ、な』
『あ・・・ぅん・・・でも、まだ着替えてなかった・・・みたいだけ・・・ど・・・』
風は、通り過ぎるや否や庭に出て、横に逸れて行った。
『あんな恰好してたら風邪ひくんじゃねーの!?』
『鍛えて、るから大丈夫じゃない!?病気で倒れてるのとか見た事無いけど・・・』
ミナムとジェルミは、顔を見合わせただけでまた食事を始め、暫くしてとぼとぼ階段を降りて来てキッチンに向かおうとしたミニョをジェルミが呼び止めた。
『ミニョー、ミニョも一緒に食べようよーお昼まだでしょう!』
駆け寄ったジェルミに腕を掴まれたミニョは、皿を渡され、次々料理を盛られてきょとんとした。
『これと、こっちも、あ、あと、こっちもね!』
あっという間に山盛りにされたお皿を眺めたミニョは、ジェルミの食べてと訴える目に促され緑の葉っぱを咥えて頷いた。
『美味しい!?美味しいよね!昨夜のディナーもデザートも美味しかったけど毎日これが食べられるってなーんか幸せじゃない!?』
『え、ぁ、はぁ・・・』
『やっすい幸せだなぁジェルミー、一か月限定だぞーその後はどうすんだよー』
ミナムの揶揄にむっとしたジェルミは、隣に座り込んであーでもないこーでもないと反論を始めた。
それを暫く見ていたミニョだったが、お皿を持ったままキッチンに向かい洗い物をしているモッタ夫人に声を掛けた。
『何かお手伝いできますか!?』
『え、あら、まぁ、まぁ、ミニョさん、ご飯は!?食べたのかしら!?』
振り返るモッタ夫人にお皿を持ったままのミニョは、少し戸惑いながらまだだと答えた。
『ここは、気にしなくて良いのよ。お家じゃないのだから、貴女は、貴女のお仕事をしてくれなくちゃ』
『はぁ、そうなのですが・・・』
モッタ夫人の声を聞きながらミニョは、持って来たお皿を見つめて、のそのそ食事を始めた。
正直、自分が何の為にここにいるのかが良く解らなくなっていた。
カメラマンのアシスタントという名目は、今朝方ソヨンに紹介された男性によって必要が無いのでは
と思え、そもそもソヨンにそれが要るのかというのは、当初からミニョの疑問でもあったからだ。
『オンニ、何も言いつけてくださらないので・・・正直、暇です・・・』
『まぁ、まだ始まったばかりですのに。ソヨンさんと同じような事を仰るのね』
『へ!?』
『ソヨンさんも暇だそうよ。皆さん撮影に慣れてるものだからやることが無くて困るんですって』
むしゃむしゃ葉っぱを食べているミニョは、水気を切った野菜を鍋に入れながら笑っているモッタ夫人の手元を見つめてぽかんとした。
大きなクエスチョンマークの立体がミニョの頭の中をふよふよ通り過ぎていた。
それを追いかけてくるんと一周した目を戻したミニョは、はっとした顔で身を乗り出し、モッタ夫人に驚かれた。
『っ、まぁ、どうかなさいましたの!?』
『え、あ、いえ、すみませんっ!オンニっ!ソヨンオンニどこにいますかっ!?』
モッタ夫人にソヨンの居場所を聞いたミニョは、指差されたまま裏口から外へ駆け出していたのだった。
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