ミニョの頬を両手で引っ張ったテギョンは、別の事を考え始めていた。
『いっひゃいですぅ・・・ヒャン・・・ニム・・・』
ミニョの同行は、本来であれば、全く意味のないものである筈だった。
カメラマンのアシスタント。
それもカメラマンが望んだアシスタントだ。
自分達は、自分達の仕事をしていれば良い。
商品としての自分達を最大限活かした仕事。
相手が他のカメラマンならいくらでもそう思えるのに何故チェ・ソヨンなんだと今更に考えていた。
『フョーン・・・』
『ん、ああ、悪い・・・』
頬を撫でる痛そうな顔を見ていたテギョンは、ミニョの格好を改めて眺めていた。
黒いワンピースに白いフリル付きのエプロン、丈の短いスカートにニーハイソックス。
どこかの国のどこかの街で突出的に見かけるそんな格好は、その歴史を紐解いて行けば、ここヨーロッパが本場だが、服装の変遷なんてものは、土地柄次第だ。
浮いているよなと思いながらテギョンは、ミニョのスカートを持ち上げた。
『ふゃ、ヒ!!!!!なっ!!!!!!』
咄嗟にテギョンの手の上から足を抑えたミニョは、真っ赤な顔をした。
『何だよ・・・俺が正しいと証明してやろうと思ったのに・・・』
『やややややって良い事と悪いことがありますっ!!!!』
『ほぉー、良く解ってるじゃないか・・・だが、それをやろうとしたのはお前だぞ』
『うっ・・・だから・・・それは謝っ・・・』
平伏しようとしたミニョを掠めた影が腕を引き、不意打ちのキスで声も奪っていた。
『っ・・・』
些か肩をベッドの木枠にぶつけたテギョンは、呼吸する間を僅かに与え、深いキスを繰り返した。
い、ち、にい、さ、んと心臓が高鳴っていくのは、ふたり同時で、テギョンの胸を滑ったミニョの手の平が躊躇いながらもシャツを引き、ミニョを抱きしめたテギョンもまたミニョの鼓動を聞いていた。
『・・・・・・ったく・・・何度キスしても間抜けな顔だよな』
鼻を潰され我に返った顔で、テギョンを見上げたミニョは、暫くすると腕の中で鼻を擦り、半笑いで俯いた。
『その服、クローゼットに入ってたやつだろう!?』
『あ、はい、一応オンニに言われた通り、全部目を通したのですが、外出着にするには、抵抗があるものもあって・・・』
『ああ、最悪なデザインのものもあったな・・・』
それでもそれが、自分達と同じように普段着では無く、衣装だという感覚ならば、多少の派手さは目を瞑ろうと思いながらテギョンはミニョを立たせていた。
けれど、立たせて気が付いたあるものを目にしたテギョンは、絶句した途端ミニョに背中を向け、一目散に部屋を飛び出し、凄まじい勢いで階段も駆け下りて行ったのだった。
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