耳元で大声で叫んだミニョの真っ赤な興奮状態に顔を顰めたテギョンは、呆れた顔でミニョの肩を押した。
自分の頭で考えたのだから、何かしらの理由が在る筈だとそこに辿り着くまでの散々な妄想は既に横に放り投げ、至って真面目な顔でミニョを見ていた。
『だから、聞いてやると言ってるだろう・・・下着を見たいって言ったのはお前だ』
『そっ、だっそ、その下着じゃ・・・』
テギョンの姿を直視出来なくなったミニョは、両手で顔を覆い、顔を背け隙間から見ていた。
『俺の物を勝手に触るなと言っているのに俺がいない場所でスーツケースを開けようなんてお前は泥棒に間違われても文句は言えない』
『ちっ違っ』
『何か見たいものがあるんだろう!?・・・下着限定ってのは気になるが・・・さっさと話せよ』
『・・・ヒョンの下着を見たい訳じゃ・・・わ、たしの・・・』
もじもじし始めたミニョの態度に後に続く言葉にピンときたテギョンが片膝を立てた。
『はっ!?お、さかっ俺がお前の下着を獲ったとでも言うのか!?』
『違いますっ!ソヨンオンニが昨日ヒョンが私のベッドで何かを数えててその数は15-7だから思
い当たる数字が無いか聞かれて15は私の下着の数と一緒で、7は一週間分だから残りは8ですが一枚足りないんですっ』
テギョンが言い終わらない内から早口で一気に捲くし立てるミニョは、拳でも回避する様な臨戦態勢で、怯えた様な目は潤み、膝は立てたもののそんな事等毛頭する気の無いテギョンは、ミニョの言葉に徐々に首を捻っていた。
『だっ、だからっそのヒョンのっヒョンはっ』
『つまり・・・やっぱり・・・おれが獲ったと思ってるってことじゃないか』
『ちっ』
『違わないぞ・・・お前の考えは、こうだっ!』
ミニョを睨みつけたテギョンは、クドクド事の成行きの説明を始めた。
『そもそも俺がお前の部屋に行かなければならなくなった理由は何だ!?』
『そっ、それは・・・ヒョンの部屋が汚れたからで・・・』
『俺は、風呂に入ると言ったよな!その間に掃除をしろとお前に言ったけど、戻って来なかった』
頷いたミニョは、肩を窄めていた。
『風呂からあがった俺は確かにお前のベッドで、オ・レ・のスーツケースを拡げてた。数も数えてた』
しかし、実際テギョンが数えていたのは、下着でもタオルでも無く、持ち込んだ一ヶ月分の私服だ。
仕事とはいえミニョとの海外旅行に浮かれているのは、何もジェルミだけでは無かった。
ソヨンが言うまでも無く、撮影中に休みをもぎ取るつもりでいたテギョンは、すでに昨夜のうちにミニョと事務所の一か月契約を知った事もあり、拡げた服を一週間ごとに分けて、その内の何枚を休みに当てられるのか、勝手な服を着られなくなったミニョと釣合いが取れるデート服はどれかと算段していた。
『ったく、俺は、お前のスーツケースには触っていないっ!一枚足りないってのは、お前が昨日ここに着くなり風呂に入ったからだろう!』
『あ・・・』
ぽかんとしたミニョは、やがてポンと手を打った。
思い出したとばかりにヘラッと笑った顔は、照れ隠しに俯き、だがしかし、テギョンを見た途端、笑顔を張り付けたまま頬を引き攣らせていたのだった。