『なっ・・・』
何を言った、何を聞かされたと止まった動きの中で、横に流れていくデジタルテロップを読むだけ読んで、縦に流れ始めた同じ言葉をまた読んで、やがて縦横無尽にぐるぐる回転し始めた文字の中心で膝をついて頭を抱えたテギョンは、甘えた顔のミニョがウルウル大きな目をして組んだ両手を口に当て床一面から見あげてくる幻想思考にぶるぶるぶるぶる頭を振っていた。
尻餅をついた腰は砕け、まだ頬を包まれたままジリジリ近づいているミニョの顔を凝視するだけ凝視して、口を開こうとしたミニョのそれにハッとして大慌てでまた口を塞いでいた。
『むぁぐ・・・』
『っ黙ってろっ』
何を言うんだとまだ頭の中はぐるぐるしている。
下着。
下着って何だ。
スーツケースに下着、は、入っている。
そして今の自分の格好。
下降する視線に合わせてミニョのそれも下がっていた。
水に濡れた服は、白で生地が薄いこともあって肌が透けて見える程だ。
もう大分乾いてはいたが、胴回りを包み込むそこに視線が向く寸前、前を隠したテギョンは、ミニョの顔を上向かせた。
『あっんっ』
『なっ、ばっパボだろうっ!なっ、何を考えてるんだっ!』
考えているのはテギョンの頭で、妙に色っぽく抵抗したミニョの声も幻想を妄想へシフトチェンジさせていた。
『なっないっ、ないっ違うぞ!断じてコ・ミニョがこんな事を言う筈が無いっ』
『ホョンニーム・・・』
顔を押し退けられ潰れた唇でテギョンを呼ぶミニョは、何とか自分の意図を伝えようとしていた。
『俺の下着なんか見て何する気なんだっ・・・そりゃぁ、俺のファンだったら泣いて喜ぶか・・・』
自棄になった思考が、明るくも暗い世間の造言に向かい始めた頃、テギョンはまた頭を振った。
ゴクリと喉を鳴らして大きな息を吐き出すとそうっと後ろを向いて顔を潰されているミニョの不満顔を目に入れた。
テギョンの手首を掴んだ顔は、話をしたいのに何をするんだと猛烈に抗議をしていて、それに舌打ちをするテギョンは、なんとか安定させた思考でミニョの前に座り込み、咳ばらいをして話を聞く体制に入っていた。
『・・・・・・聞っ聞いてやる・・・・・・下着って何だ!?』
パッと明るい顔をしたミニョは、いそいそとテギョンの前に正座し、暫くにこにこして落ち着いたテギョンの顔を見た後、その視線をテギョンの今の恰好へ向かわせた。
『早く話せっ・・・』
胡坐の上で手持無沙汰なテギョンの手が動いていた。
一点を集中的に見つめるミニョは、漸く、テギョンの焦りを理解し始め、ぐるぐる回り始めた思考にもう一度テギョンの顔を見つめて違うと思いっきり叫んでいたのだった。
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