『光の加減ですね・・・そっち修正しますか!?』
『うーん、自然光の方が良い画が撮れるけど。ダメならスクリーン入れて見るかぁ』
『衣装が思った以上に反射しますね』
写真を確認している技師に同意したソヨンの傍らに戻って来たミニョが、ちょこんと立っていた。
どうしたと顔を向けたソヨンにいじけた表情のミニョは、ぶるぶる首を振った。
『つまらなそうな顔をしているわね。彼に何か言われたの!?』
『・・・・・・昨夜の事を聞かれました』
『そう、何て答えたの!?』
『ヒョンには、話せないって・・・』
正面でミナムを叩いたテギョンを見つめながらミニョが顔を背けていた。
それを見ながら袖を引いたソヨンは、顔を寄せた耳元である事を囁き、途端に焦った顔で屋敷に向かって駆け出したミニョを笑って見送っていた。
『あれ、ミニョssiどうかされたのですか!?』
『ちょっとね、仕事をお願いした』
極秘と書かれたファイルを手にしたソヨンは、それを捲り、技師も一緒に覗き込んでいた。
A.N.Jellのこれまでの活動が簡単に纏められた資料だ。
『シヌssiとジェルミssiのツーショットは、ありきたりですね。テギョンssiと組んでもらいますか!?』
『そうね。あの顔をどう崩すかが、今回最大の仕事なのよね・・・あーんないつでも対抗心むき出しの顔をされていると可愛げがなくて苛めたくなるんだけど・・・どこが好いのかしらねぇ』
『テギョンssiの柔和な表情もあるけど少ないですよね。プライベートな方が好い顔してますよ』
ページが進むに連れ、仕事とは関係の無いプライベート写真が何十枚と挟み込まれ、ミニョと向かい合って笑っているテギョン、シヌ、ジェルミとそれぞれが写っていた。
『どうせスキャンダルの影響を払拭するのが目的なんだからこっちの顔を多く欲しいのよね・・・』
資料を渡してカメラを構えるソヨンのしかめっ面を技師がクスクス笑っていた。
『ユジンssiの時も思いましたけど・・・Fグループには、余程のやり手がいるみたいですね』
『そう。凄腕の秘書がいるのよ。側近中の側近よ。会長の息子だけど世間は知らないみたい。これだけの隠し撮りが出来るなら彼にカメラマンをやって貰ったらどうかと提案したんだけど、断られたわ』
『影は光の下にあってこそ輝くものですから・・・』
ヘアメイクのスタッフを呼んだ技師は、指示を出してその背中を見送っていた。
『ふは、貴方もそうだから!?』
『ええ、たまたま付いてきただけなのに人質の気分ですよ』
『仕方ないわね・・・あいつにこの屋敷をうろつかれたらとても困るし・・・ファン・テギョンがあんな顔じゃなけりゃ、どうってこと無いんだけど・・・あの顔じゃぁねぇ・・・』
げんなりした顔で、ソヨンは笑っていた。
『お目にかかって思わず恐縮しそうになりましたよ・・・』
技師も困惑したと思い出し笑いをし、ソヨンが何度も頷いた。
『そうよ・・・私も実物を見た時は、心臓が止まるかと思ったわ・・・あんなのがふたりって・・・』
『撮影期間と滞在期間が見事に重なっていますから・・・・・・あの方の計画ですよね』
『多分ね・・・アフリカに来るって言ってたけど私がこの仕事引き受けちゃったから拗ねていたし・・・
私への嫌がらせよね・・・ったく、息子を連れてきただけでも頭が痛いってのに・・・あの子よりガキっぽくて困ったものだわ』
ぐったり肩を落としたソヨンを見下ろした技師は、パソコンに向き直っていた。
『王子も暫くこちらに滞在されるそうですよ』
『えっ、そうなの!?次は、いつ会えるのかなぁって思ってたのに』
嬉しそうに笑うソヨンを可笑しそうに笑った技師は、考え込んでぼそりと口を開けた。
『帰っていらしたら宜しいのですよ』
『嫌ーよ。あんな窮屈な思いはもう沢山!私は今の生活が気に入っているの。アフリカにいたってあの子の成長は見れるもの!頑固爺共相手に毎日怒鳴ってるなんてもう冗談じゃないわ!』
『ソヨン様が嫁がれたおかげで国も変わったのですよ』
『私じゃないわ。あの人が変えたのよ。私と知り合う前から何かと準備をしていたんでしょう。私との結婚は、きっかけに過ぎないわ・・・継承権が無くなるのを承知で結婚しようなんてあんな馬鹿どこにもいないわよっ・・・でも、だからこそよね、あの子には、あの国で大きくなって欲しいわ』
準備を整えたスタッフの合図の手が挙がっていた。
ファィンダーを覗いていた目をあげた笑顔に連られて笑った技師も仕事に戻りましょうと表情を変えたが着信したメールに苦笑いを浮かべてソヨンにそれを渡していたのだった。
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