『痛ってーなー何するんだよ』
胡坐の上に倒した頭を抑えたミナムは、涙目で顔をあげた。
『俺達の問題だ。それに俺はまだ、そんなつもりは無い』
『そんなの頭ん中だけだろう。俺だってそんなつもり無かったぜっ』
『っ!?・・・・・・・・・・・・ぁぇん・・・っおっ前ー、まさかっ』
ぎょっとしたテギョンにしまったと口を抑えたミナムは、ドギマギしながら言葉を探していた。
ヘイとの関係は、周知の事実だが、情を交わしている事は、公然の秘密だ。
『やっ、ごめん、今のは口が滑った!まだ無いっ!何も無いってっ』
『お前、俺に散々言ったんだからなっ・・・お前が、問題を起こすなよっ』
消滅しないスキャンダル。
有相無相は、些細な事を問題にして、ミナムとヘイの交際だってその一つだ。
注目をされているからこそ守らなければならない領域がある。
戦略として使うのは勝手だが、グループである以上、単体の責任という訳にはいかないとミナムはテギョンを責め、そして今、立場を逆にした不用意な一言に慌てていた。
『チェッ・・・でも、さぁ、そういうことだろう・・・ミニョ、何か悩んでるみたいなんだけど、俺が聞いた時は、ヒョンに歌って欲しいって言われて、もう一度デビューしないかって言われて戸惑ったんだって言ってたぞ・・・でも、その時他に何かあったんだと俺は思っているんだけど・・・』
上目のミナムに見つめられながら黙って聞いているテギョンもその時の事を考えていた。
最初のキスは、何となくだった。
何となく近づいた顔に言葉より先に体が動いていた。
照れくさそうなミニョを見てどこか満足して続きを話し始め、押し倒したのは偶然だった。
偶然押し倒して、自分の手の位置に気が付いて、二度目のキスは、ただ知りたかったのだ。
抱き締めればどこもかしこも柔らかく、組み敷かれるミニョは、小さいなと思っていた。
化粧もしてない肌が、光って見えて、足に触れていた手を動かしてスカートを捲りあげながら、際ど
い場所に掛かった指にビクンと震えたミニョの手が動いていた。
口元を隠す手を見つめながら、視界に入り込んできた大きな目に見る見る涙が溜まっていくのを見ていた。
ほんの数秒の出来事だっただろう。
けれど、長い時間だった。
無言で離れ、動転している気を紛らわす様に早口でミニョが何か言っているのを聞きながら自分の体の変化を抑え込んでいた。
『ったく・・・嫌がってる様には見えなかったんだよな・・・』
『何!?』
『なっんでも無いっ』
声にしてしまった呟きに反応したミナムにしまったと顔を顰めたテギョンは、ミニョのよそよそしい態度も何もかもは、仕事への悩みでも世話になっているからでも無くミナムが言う様にその出来事が原因だろうなと考えていたのだった。
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