翌日、撮影は、ソヨンの広大な敷地を使って始まった。
早朝から準備を始めていたスタッフは、裏庭に設置した機材の周りで朝食を済ませ、衣装に着替えたA.N.Jell達は、動き回る人達の前に少し緊張の面持ちで現れ、徐々にリラックスしていく様子を指示を出しながらソヨンがファインダーで追いかけていた。
『ソヨンssi!少し、確認をしてください』
スタッフに呼ばれ夥しい数の画像が並ぶ画面を確認し始めたソヨンは、ミニョを呼び、飲み物を持ったミニョは、スタッフに囲まれるA.N.Jellに近づいて行った。
『どうぞ』
『ああ、ミニョサンキュー』
『アシスタントも様になってるな』
『ミーニョー、俺にもー頂戴ー』
撮影を始めて大した時間も経っていないのにぐったり寝そべっているジェルミをミニョが不思議そうに見下ろした。
『ジェルミ、どうかしたのですか!?』
『今頃、時差ボケだとさぁ、昨日は、元気だった癖に眠れなかったんだと』
『そうなのですか!?お薬は!?』
『薬ーはー飲ーんだよー、でもさぁ、こっちの太陽に慣れるまでもう少しかかりそう・・・』
空を見上げたジェルミは、ミニョからペットボトルを受け取って撮影用のベンチにうつ伏せて倒れ込んだ。
『だーいじょうぶーすぐ元気になるから心配しないでー』
『はぁ・・・』
返事をしようとしたミニョは、けれど、横から腕を掴まれていた。
そちらに顔を向けながら付いて来いというテギョンに従ってミニョは、物陰へ向かった。
『何ですか!?』
『昨夜、部屋に戻らなかっただろう・・・あの女と何を話した!?』
ミニョを連れて行ったソヨンが何を話したか、テギョンも実はそれが気になってあまり眠れてはいなかった。
ミナムの話を横から攫っていったのだから当然、Fグループの契約について聞かされただろうと思っていた。
しかし。
『女同士の話です。ヒョンニムには言えません』
ミニョから返ってきたのは意外な答えだ。
傾げた首を抑えたテギョンは、俯いた髪の影でミニョの頬が染まるのを不思議そうに見ていた。
『女同士って!?』
『男同士もする話です』
『は!?』
『ヒョ、ヒョンニムもきっとシヌひょんとかジェルミとしてると思いまっすよ。オンニは、その、経験が豊富だから、その何ていうか・・・教えて貰っただけですっ』
『は!?え、おいっ』
話は終わっていないと言おうとしたテギョンの前からミニョは勢いよく駆け出していた。
聞きたいことへの答えを得られぬまま、戻って来たテギョンをミナムが呼び止めた。
『ミニョ、聞いたのか!?』
『いや、まだ、聞いていないみたいだ・・・女同士の話をしたとかなんとか・・・』
『女同士・・・って、まさか、あれか!?』
『心当たりがあるのか!?』
『いや、ある様な無い様な・・・』
恍けた顔と真面目な声で手招きしたミナムに耳を寄せたテギョンは、眉間を寄せ、やがて勢いよく
その頭に拳をひとつ落としていたのだった。