極寒のブリザードとは、果たしてどんなものか。
ちらちら舞い降りて、肩とか頭とか、降り積もっても割とすぐ溶けて水になってしまう雪と違い、氷の粒が降っているだろう。
そして、その氷は、きっと肩とか頭とか消えるどころかピキンとかパキンとか身を守る服を凍らせ、顔に張り付いて毛穴も塞いで喋ることも出来なくなって息をすることも苦しくそのうち全身へ。
などと、近づいてくるテギョンを見ながらミナムの頭は、余計な事を考えていた。
温かい部屋の中にいる筈だが、冷たくビュービュー激しい風に吹かれている感覚は、テギョンがあまり見せない満面の笑顔のせいだ。
座れと言われても座らず、じっとしてもいない双子にどんどん近づきながら部屋を見回していた。あちこち、多分ミニョが振り回していたクッションとミナムが這いずり回っていたせいで舞ったと思われる埃らしきものが目につく。
テーブルに指を当て、小姑の様にそこを撫で、胸に止めていたハンカチーフで指を拭い、足元の絨
毯の折れ曲がった箇所を蹴り上げては、直していた。
『・・・やっべ・・・尋常じゃねぇな・・・ヒョ・・・』
『オオオオオオッパ!どっ、どどうするのですかっ!ヒョヒョンめめちゃくちゃ怒ってますよー』
ミナムにくっつき、押されるままカニの様に横歩きで動いているミニョは、振り向くのが怖いのか、後ろを気にはするもののテギョンを見ることは避けていた。
『っ、もう少しなんだ・・・そのまま行けよっ』
『どっ、どこっ・・・えっ!?あっ!!!』
ベッドに沿ってミニョを押していたミナムが、壁を押した。
するとガタンという音と共に壁が向こう側へ開き、やったという顔をしたミナムは、いち早く立ち上がってミニョに手を伸ばした。
しかし、後ろからテギョンに羽交い絞めにされたミニョは、宙に浮き、ジタバタしながら首に回っている腕にしがみ付いていた。
『あっちゃー・・・捕まるなよなぁミニョ・・・』
手の平で顔を覆ったミナムは、振り返ってミニョを見つめたが、その踵をゆっくり引いた。
『オオオオオッパ助けっ』
『コ・ミナム!?俺の言った事を聞いていたか!?』
『聞いてたけどさっ!説教なら聞かないっ!掃除させるならミニョに頼んでくれっ!俺は明日に備え
てもう寝るっ』
暴れるミニョを浮かせていたテギョンは、重そうにとりあえずとばかりに床に爪先を付けさせ、それを見ていたミナムは、ニッと笑うとさっさと隣の部屋を駆け抜けた。
『えっあっオッパずるーいー』
自由になった片手とそれでも掴まれたままの腕とテギョンを見上げたミニョは、にへらと笑った。
が、ポンと頭に置かれた手によって床に沈んでいた。
『ヒョヒョヒョヒョンニムー』
『ったく、俺の部屋で好き勝手に暴れやがって!最初に言ったよなっ!俺の部屋のものを動かすなと!俺はっ!綺麗好きなんだっ!物が少しでも動いているのも埃があるのも我慢ならないっ!』
『そっそっ掃除しまっすっすっすぐっ』
観念すると祈りのポーズで見上げたミニョは、難しい顔で遠くを見て首を傾げるテギョンの視線を追いかけた。
ミナムが開いた壁の向こうは、先程ミニョがソヨンに連れられて入った部屋で、その奥は当然ミニョの部屋だ。
『繋がっていたのか!?』
正面に見えるベッドを見てミニョの腕を引いたテギョンは、また羽交い絞めにして暴れるミニョを抑えつけていたのだった。