『ひとりで何を楽しんでんだよ』
『え、あー、ヒョンも食べますかー』
ミナムと同じ種類の菓子袋を開けていたミニョは、バリポリ音をさせてそれを食べ始め、片手でハンドルを握っているテギョンは、窓に肘を付いて額を抑えていた。
『っ前なぁ前にも言っただろう・・・運転中なんだ!もっと気を使え』
ちらちら横を気にして手振りで呆れているテギョンは、じっと前を見据え、こちらを見ている様なシヌに眉間を寄せていた。
『気は使いましたよー・・・こっちを選んだし・・・』
『それのどこが気を使ったんだ』
『だって、狭いの嫌なんでしょう・・・あっちに乗ったら、また窮屈かなぁ・・・って』
『・・・外国まで来て知らない道を運転する方が気を使うとは思わないのか』
『え、あ・・・・・・あー・・・そういえば、そ・・・うです・・・かね』
『チッ・・・まぁ、俺の運転技術ならどこでも問題ないけどな』
『む、それなら文句を言わなくても・・・』
『ぁあ!?』
『あ、いっえ、何でも・・・ありません・・・ヒョンが一番ですっ!ヒョンが好っ』
『は!?』
『あ・・・れ・・・間違え・・・』
テギョンを評価しようと親指を出しかけていたミニョは、慌てて引っ込め、赤くなって俯いた。
『なっ、何でもないです・・・間違え・・・ま・・・・・・間違えてないですっ』
睨まれ、気まずくなった空気を和ませる方法も思いつかないミニョは、テギョンを気にしながらも黙り込み、菓子を食べる事も辞めて外に目を向けた。
暫くすると人通りも車通りも無くなって、なだらかな丘陵がどこまでも広がる景色に大きな感嘆を漏らし始めていた。
『ったく、前にも見ただろうに・・・』
『下から見るのは初めてですよぉ、前は、オンニと空港からヘリコプターだったですから』
『ヘッ・・・リコプタぁー!?』
『はいっ!初めて乗せて頂きました!帰りも送って頂いて・・・』
大きくなる感嘆に窓を開けたミニョは、外に手を伸ばして風を受け止め笑っていた。
呆れ顔のテギョンは、黙り込んでいたが、軽い舌打ちをして口を開いた。
『・・・・・・・・・なぁ・・・コ・ミニョ・・・お前・・・チェ・ソヨンを不思議に思わないのか!?』
『ふぇ!?』
何をという顔で、振り返ったミニョは、テギョンの真剣な眼差しに顔を引き締めた。
『金持ちだってのは、お前も解っているよな!?』
『え、ああ、はい・・・この車みたいなやつ、オンニの家には何台もありましたし、お家も・・・ホテルよ
り豪華で・・・お城みたいでしたし・・・泊めていただける場所は、普通のお家でしたけど・・・本物のお城みたいな物もあって・・・それもオンニの持ち物だって教えて頂き・・・ました』
『普通の人間は、そういう場所に住めないってお前の頭でも解るよな!?』
『えっ・・・ぅうーん、解・・・るとは思いますけど・・・離婚の慰謝料だってオンニは仰っていた・・・ので』
相手が、どこかの国の王族らしいとミニョは、ミナムから聞いている。
ソヨンの話からも離婚相手は、普通の一般的な人ではないらしいと推測出来るものを見せられたが、王族等というスケールの違うものを理解しようとしても金持ちとの違いもはっきりは判らない。
テギョンの顔色を窺いながら何を聞かれているのかと戸惑うミニョは、困り顔で手を握りしめた。
『離婚相手について聞いたことは、あるのか!?』
『えっ、い、詳、しくは・・・子供がいるとは聞きました・・・けど・・・あっ、でも、このお話は、したら駄目ですっ!オッパにも絶対言うなって言われましたっ!』
『子供がいるのか!?』
真横を見たテギョンにミニョが驚いて前を指差した。
ハンドルの僅かなブレを修正するテギョンは、隣で息を吐き出したミニョにまた舌打ちをした。
『誰にも言わないから話せ』
チェ・ソヨンについての何かを聞きたそうなテギョンにミニョは、困った顔をしながらも見聞きしている事をポツポツ話し始めた。
自分の知っている事と頭の中で照らし合わせていたテギョンは、ミニョの同行についてひとつの結論を導き出し、それを直接ソヨンに聞くべきだと考えていたのだった。
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